実家を放置するリスクは、建物が古くなることだけではありません。費用、事故、法律、相続まで影響が広がります。
3-1.リスク1 使っていなくても維持費が発生する
誰も住んでいなくても、固定資産税や都市計画税は毎年課税されます。
さらに、火災保険、水道光熱費、草刈り、交通費、修繕費がかかります。月単位では小さく見えても、年間50万円なら5年間で250万円です。
売却価格が上がる根拠がないまま保有すると、資産価値より維持費の負担が大きくなる可能性があります。
3-2.リスク2 建物が劣化して資産価値が下がる
換気や点検がされない住宅では、湿気、カビ、腐食、雨漏り、シロアリなどの被害に気づくのが遅れます。
建物の状態が悪くなると、次のように選択肢が減っていきます。
- そのまま売却できず、解体を求められる
- 賃貸に出すための改修費が高くなる
- インスペクションで重大な不具合が見つかる
- 買主が住宅ローンを利用しにくくなる
- 売却価格から解体費や修繕費を差し引かれる
- 再建築不可などの条件により活用が難しくなる
放置しても土地の価格が維持されるとは限りません。建物の解体費や残置物処分費が差し引かれ、手取りが想定より少なくなることもあります。
3-3.リスク3 火災・不法侵入・犯罪の危険が高まる
郵便物がたまり、庭が荒れ、夜間も照明がつかない家は、外部から空き家だと分かりやすくなります。
その結果、次のようなリスクが高まります。
火災が発生した場合、建物だけでなく隣家へ被害が及ぶ可能性があります。保険契約が空き家の実態に合っていなければ、想定していた補償を受けられないおそれもあります。
3-4.リスク4 倒壊や飛散で損害が発生する
老朽化した建物では、地震や台風、強風、大雪などをきっかけに事故が起こる可能性があります。
- 屋根材や外壁材が飛ぶ
- 塀や門扉が倒れる
- 庭木が折れて道路や隣地へ倒れる
- 建物の一部が崩落する
- 通行人や車、隣家へ損害を与える
建物や塀などの設置・保存に問題があり、第三者へ損害を与えた場合は、所有者が責任を問われる可能性があります。
特に台風や地震の後は、現地確認を先送りしないことが重要です。
3-5.リスク5 害虫・悪臭・越境で近隣トラブルになる
空き家の管理不足は、所有者だけの問題ではありません。
雑草や庭木が伸びると、蚊、ハチ、ネズミ、害獣などが発生しやすくなります。排水トラップの水が蒸発すれば、下水の臭いや害虫が室内へ入り込むこともあります。
次のような状態は、近隣から自治体へ相談される原因になります。
- 枝や雑草が隣地へ越境している
- 落ち葉が隣家や道路へ広がっている
- ごみを不法投棄されている
- 害虫や害獣が発生している
- 雨水や汚水が周囲へ流れている
- 外壁や屋根が崩れそうになっている
一度近隣関係が悪化すると、売却や賃貸を進める際にも支障が出る可能性があります。
3-6.リスク6 管理不全空家や特定空家になる可能性がある
2023年12月に施行された改正空家法では、「管理不全空家」という区分が設けられました。
管理不全空家とは、適切に管理されず、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある空き家です。
さらに状態が悪化し、次のような状態になると、特定空家と判断される可能性があります。
- 倒壊など保安上の危険がある
- 著しく衛生上有害となるおそれがある
- 著しく景観を損なっている
- 周辺の生活環境を守るために放置が不適切である
自治体から指導を受けても改善せず、勧告を受けた管理不全空家や特定空家の土地は、固定資産税等の住宅用地特例から外れる可能性があります。
制度の詳細は、国土交通省の固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置で確認できます。
固定資産税が必ず6倍になるわけではない
小規模住宅用地の課税標準が6分の1から本来の水準に戻るため、「固定資産税が6倍になる」と説明されることがあります。
しかし、実際の納税額には次の要素も影響します。
- 建物の固定資産税
- 都市計画税
- 負担調整措置
- 土地の面積
- 自治体ごとの税率
- 課税標準額
そのため、納税額全体が必ず6倍になるわけではありません。一方で、土地部分の負担が大きく増える可能性はあるため、自治体から指導や通知が届いた場合は放置しないでください。
行政代執行の費用を請求される可能性もある
危険な特定空家について、所有者が命令に従わない場合などには、自治体が建物の除却などを行う行政代執行へ進むことがあります。
行政代執行は自治体が無料で解体してくれる制度ではありません。原則として、かかった費用は所有者へ請求されます。
3-7.リスク7 相続人が増えて処分しにくくなる
実家の名義を亡くなった親のままにすると、時間の経過とともに相続関係が複雑になる可能性があります。
相続人の一人が亡くなると、その配偶者や子へ権利が引き継がれ、売却、賃貸、解体などの意思決定に関わる人が増えていきます。
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。原則として、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
2024年4月1日より前に発生した相続についても、未登記の場合は原則として2027年3月31日までに申請が必要です。正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
詳しくは、法務省の相続登記の申請義務化に関する案内をご確認ください。