強制移転が現在の政策ではないとしても、都市の集約に関する議論自体は今後も続くと考えられます。背景にあるのは、住宅数、人口、世帯数、インフラ維持費のバランスです。
3-1.人口だけでなく世帯数も2030年以降は減少する見通し
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、出生中位・死亡中位の仮定で、日本の総人口は2020年の1億2,615万人から2070年に8,700万人まで減少し、65歳以上の割合は38.7%になると推計されています。
住宅需要との関係では、人口より世帯数の動きも重要です。同研究所の世帯数推計では、世帯総数は2030年の5,773万世帯をピークに減少し、2050年には5,261万世帯になる見通しです。
推計には前提があり、将来を確定するものではありません。それでも、住宅が増え続ける一方で世帯数が減れば、需要の弱い地域から空き家が増える可能性は高まります。
3-2.低密度の市街地は生活サービスを維持しにくい
人口が広い範囲に薄く住む地域では、道路、上下水道、公共交通、ごみ収集、学校、医療、福祉などを少ない住民で支えることになります。すべての地域で現在と同じサービス水準を維持できるとは限りません。
そのため、将来起きやすいのは「突然住むことを禁止されること」より、次のような緩やかな変化です。
- バス路線の減便や廃止
- 学校や公共施設の統廃合
- スーパー、金融機関、医療機関などの撤退
- 上下水道や道路更新の優先順位の変化
- 居住誘導区域内への住宅取得・移転支援
- 災害リスクの高い区域から安全な区域への移転支援
実際の施策やサービス水準は自治体ごとに異なり、居住誘導区域外だから必ずサービスが縮小されるわけではありません。ただし、自治体が将来どの拠点へ人と機能を誘導するのかは、長期的な住みやすさを考える重要な材料になります。
3-3.立地適正化計画は全国で広がっている
国土交通省の2025年6月資料によると、2025年3月時点で636都市が立地適正化計画を公表し、907都市が計画の作成や運用に取り組んでいました。
計画はおおむね20年後の都市像を展望しつつ、評価結果に応じて見直されます。現在は居住誘導区域内でも、将来の改定で区域が変わる可能性があるため、「一度確認すれば終わり」ではありません。