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実家の土地活用

広島県呉市で空き家が倒壊し、市道をふさいだため緊急代執行が行われました。緊急代執行の仕組みや費用負担、固定資産税への影響、空き家所有者が確認すべき対策を解説します。

更新 2026.09.05読了目安 17分監修:潟沼勇気

2026年9月4日、広島県呉市で空き家の一部が倒壊し、市道をふさいだため、市が緊急代執行による撤去を始めたと報じられました。

報道によると、建物は1930年代に建てられた木造瓦葺きの平屋で、雨の影響により倒壊した可能性があるとみられています。ただし、雨だけが原因だったのか、老朽化や構造上の問題がどの程度影響したのかは、報道時点では明らかになっていません。

今回の事例は、空き家を使わずに放置しているだけでも、倒壊、通行障害、近隣被害、行政による撤去、費用請求などにつながる可能性があることを示しています。

この記事では、緊急代執行の仕組みや通常の行政代執行との違い、空き家所有者に生じる可能性がある費用と責任、相続した実家を放置しないための具体的な対策を解説します。

空き家は、人が住んでいないというだけで直ちに危険になるわけではありません。しかし、屋根や外壁の劣化、雨漏り、腐食、シロアリ被害などが進んでも発見されにくく、台風や大雨をきっかけに被害が表面化することがあります。

  • 緊急性が高い場合、市区町村は通常の命令手続きの一部を経ずに緊急代執行を行うことがあります
  • 行政が撤去した場合でも、原則として所有者等に費用が請求される可能性があります
  • 管理不全空家等や特定空家等として勧告を受けると、土地の固定資産税に関する住宅用地特例が適用されなくなる場合があります
  • 倒壊や部材の落下によって他人や隣家に損害を与えた場合、損害賠償を求められる可能性があります
  • 売却、賃貸、解体、土地活用のどれを選ぶ場合でも、建物が危険な状態になる前に現状を把握することが重要です

空き家を相続したら、まず名義、建物の状態、接道条件、修繕費、解体費、売却可能性を確認しましょう。「いつか考える」ではなく、判断期限を決めることが大切です。

1-1.空き家の一部が市道をふさいだ

テレビ新広島の2026年9月4日の報道によると、呉市倉橋町鹿老渡にある空き家の一部が倒壊し、市道をふさぎました。

同日午前9時前、音戸倉橋土木出張所の職員から空き家が崩れているとの連絡があり、市は速やかな対応が必要と判断しました。市道をふさいでいた部材を撤去し、週明け以降に残りの部分を解体する方針とされています。

報道で確認できる主な内容は次のとおりです。

確認項目報道内容
所在地広島県呉市倉橋町鹿老渡
建物木造瓦葺きの平屋
建築時期1930年代
発生時期2026年9月4日未明から朝の間とみられる
被害建物の一部が倒壊し、市道をふさいだ
行政の対応緊急代執行による撤去と解体
原因雨の影響で崩れた可能性があると報道

原因については「雨の影響で崩れたとみられる」と報じられている段階です。雨、老朽化、建物の構造、地盤などの因果関係を、報道だけで断定することはできません。

1-2.呉市では初めての緊急代執行

今回の措置は、呉市が空き家に対して行う初めての緊急代執行と報じられています。

呉市が公表している情報では、市内の空き家は2万7,960戸、空き家率は22.6%と推計されています。全国的にも空き家が増えるなかで、自治体による指導、勧告、命令、代執行が身近な問題になりつつあります。

2-1.危険が迫っている場合に行政が必要な措置を行う制度

緊急代執行とは、災害その他の事情によって、特定空家等に対する通常の手続きを行う時間がない場合に、市区町村が必要な措置を行う制度です。

空家等対策の推進に関する特別措置法は2023年に改正され、緊急代執行の制度が新たに設けられました。

通常の行政代執行では、所有者等への助言・指導、勧告、命令などを経て、所有者が必要な措置を行わない場合に行政が代わって対応します。

一方、建物が崩れかけている、部材が道路へ落下しているなど、生命、身体、財産への危険が切迫している場合には、通常の手続きを待てないことがあります。そのような状況で用いられるのが緊急代執行です。

2-2.行政代執行・略式代執行との違い

種類主な状況手続きの特徴
行政代執行所有者等が判明しており、命令しても対応しない所定の手続きを経て行政が必要な措置を行う
略式代執行所有者等を確知できない公告などの手続きを経て行政が必要な措置を行う
緊急代執行災害などにより危険が切迫し、通常の手続きを行う時間がない一部の事前手続きを経ずに必要な措置を行える

どの制度が適用されるかは、建物の状態、所有者の特定状況、周辺への影響、緊急性などを踏まえて自治体が判断します。

すべての老朽空き家が直ちに撤去されるわけではありません。また、行政が無条件で空き家を処分してくれる制度でもありません。

3-1.行政が解体しても無料になるとは限らない

空家法に基づく代執行の費用は、原則として所有者等から徴収される可能性があります。

行政が先に解体業者へ工事を発注したとしても、所有者が費用負担を免れるとは限りません。道路の封鎖、重機の搬入、警備、廃材の運搬、残置物の処分などが必要になると、所有者自身が計画的に解体する場合より費用が膨らむ可能性もあります。

具体的な請求額や回収方法は、建物の規模、工事内容、所有関係、自治体の対応によって異なります。

3-2.解体費以外の負担が生じる可能性もある

空き家の倒壊によって想定される負担は、解体費だけではありません。

  • 道路や隣地へ落下した部材の撤去費
  • 残置物や廃材の処分費
  • 安全確保のための仮囲いや警備費
  • 隣家や車両などを損壊した場合の賠償
  • 通行人などにけがをさせた場合の賠償
  • 相続登記や権利関係を整理する費用
  • 解体後の土地の維持管理費
  • 住宅用地特例がなくなった場合の固定資産税等の増加

実際にどの費用を誰が負担するかは個別事情によって異なります。行政から通知を受けた場合や第三者への損害が発生した場合は、自治体の窓口や弁護士などの専門家へ早めに相談する必要があります。

4-1.大雨や台風をきっかけに倒壊する

長期間使われていない住宅は、雨漏りや湿気の滞留が起きても発見が遅れやすくなります。

屋根材のずれや破損から雨水が入り、柱、梁、土台、下地材などの劣化が進むことがあります。さらに、瓦屋根など重量のある屋根では、建物を支える部分が弱くなると危険性が高まる可能性があります。

ただし、外観だけで建物の安全性を正確に判断することは困難です。傾き、ひび割れ、屋根の崩れなどが確認された場合は、自分で屋根へ上がらず、建築士や施工会社などに調査を依頼しましょう。

4-2.外壁や屋根材が道路・隣地へ落下する

建物全体が倒壊していなくても、瓦、軒裏、雨どい、外壁材、窓ガラスなどが落下することがあります。

空き家が次の場所に近い場合は、周囲への影響が大きくなりやすいため注意が必要です。

  • 通学路や生活道路に面している
  • 隣家との距離が近い
  • 斜面や擁壁の上に建っている
  • 人通りの多い道路に面している
  • 強風を受けやすい場所にある
  • 積雪や大雨の影響を受けやすい

4-3.管理不全空家等・特定空家等の対象になる

2023年の空家法改正により、放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家を「管理不全空家等」として、市区町村が指導や勧告を行えるようになりました。

さらに、倒壊の危険性が高いなど、周囲の生活環境へ著しい悪影響を及ぼしている空き家は「特定空家等」に該当する可能性があります。

区分主な状態行政の対応例
管理不全空家等適切に管理されず、このままでは特定空家等になるおそれがある指導、勧告
特定空家等倒壊のおそれや衛生・景観上の著しい問題などがある助言・指導、勧告、命令、代執行

認定や措置は自治体が個別に判断します。単に古いという理由だけで、直ちに特定空家等になるわけではありません。

4-4.固定資産税の住宅用地特例が外れる可能性がある

住宅が建つ土地には、一定の要件のもとで固定資産税の課税標準を軽減する住宅用地特例があります。200平方メートル以下の小規模住宅用地では、固定資産税の課税標準が6分の1になる仕組みです。

しかし、管理不全空家等または特定空家等として自治体から勧告を受けると、住宅用地特例の対象外になる場合があります。

「解体すると固定資産税が上がるから、そのままにしておく」という判断もありますが、放置すれば特例を維持できるとは限りません。

実際の税額は、土地の評価額、面積、自治体、都市計画税の有無などによって異なります。解体前には、自治体の資産税担当部署へ確認しましょう。

4-5.売却や活用が難しくなる

空き家は、劣化が進むほど修繕費や解体費が増える可能性があります。建物が危険な状態になれば、買主が見つかりにくくなり、売却条件にも影響します。

また、相続登記が行われていない、共有者が多い、境界が不明確、家財が残っているといった問題が重なると、処分までに長い時間がかかることがあります。

空き家になってから対応するより、親が住んでいる段階から家族で話し合い、登記や家財を整理しておく方が選択肢を残しやすくなります。

5-1.権利関係と連絡先を確認する

最初に、誰が建物と土地を所有しているのかを確認します。

  • ☐ 土地と建物の登記名義を確認した
  • ☐ 相続登記が完了している
  • ☐ 共有者全員の氏名と連絡先を把握している
  • ☐ 固定資産税の納税通知書を確認した
  • ☐ 火災保険や地震保険の契約状況を確認した
  • ☐ 自治体から届いた通知を確認した

2024年4月1日から相続登記が義務化されています。過去に発生した相続についても対象になる場合があるため、名義が故人のままなら司法書士や法務局へ相談しましょう。

5-2.建物と敷地の危険箇所を確認する

建物へ入ること自体が危険な場合もあります。明らかな傾きや崩落があるときは中へ入らず、自治体や専門家へ連絡してください。

  • ☐ 屋根材や瓦のずれ・落下がない
  • ☐ 外壁や軒裏が道路側へ崩れかけていない
  • ☐ 柱や建物全体に大きな傾きがない
  • ☐ 雨漏りや天井の染みがない
  • ☐ 基礎や擁壁に大きなひび割れがない
  • ☐ 雨どいや排水溝が詰まっていない
  • ☐ 樹木や雑草が道路・隣地へ越境していない
  • ☐ 窓や玄関が破損し、不審者が侵入できる状態になっていない
  • ☐ シロアリや害獣の被害が確認されていない
  • ☐ 大雨や台風の後に異常がないか確認している

遠方に住んでいて定期的に訪問できない場合は、空き家管理サービスの利用も選択肢です。

6-1.現状のまま売却する

建物が古くても、立地や土地の条件によっては古家付き土地として売却できる場合があります。

解体してから売却する方法もありますが、先に解体すると住宅用地特例、再建築の可否、解体費などに影響する可能性があります。解体を決める前に、不動産会社へ現況のまま査定を依頼することが重要です。

6-2.修繕して賃貸する

駅からの距離、周辺の賃貸需要、間取り、駐車場、耐震性、修繕費などの条件が合えば、戸建て賃貸として活用できる可能性があります。

一方で、家賃収入だけを見て判断するのは危険です。

  • 初期の改修費
  • 入居者募集費
  • 管理委託費
  • 固定資産税
  • 火災保険料
  • 将来の修繕費
  • 空室期間
  • 退去後の原状回復費

これらを含めた収支を確認し、投資額を何年で回収できるのかを試算しましょう。

6-3.解体して土地を活用する

建物の再利用が難しい場合は、解体して土地を活用する方法があります。

  • 自宅や二世帯住宅を建てる
  • 賃貸住宅を建てる
  • 駐車場にする
  • 貸地として利用する
  • 隣地所有者へ売却する
  • 更地として売却する

ただし、用途地域、接道、建ぺい率、容積率、敷地形状、周辺需要によって実現できる活用方法は変わります。

特に再建築不可の土地では、一度建物を解体すると新しい建物を建てられない場合があります。解体前に必ず建築条件を確認してください。

6-4.維持管理しながら判断期限を決める

すぐに売却や活用を決められない場合は、一定期間維持する方法もあります。

ただし、結論を先送りするだけでは管理費や固定資産税が増え続けます。「半年以内に査定を取る」「1年以内に家族で方針を決める」など、具体的な期限を設定しましょう。

維持する場合は、定期巡回、換気、通水、草木の管理、郵便物の回収、雨漏りの確認などが必要です。

7-1.まず周囲の安全を確保する

屋根や外壁が落下しそうな場合、無理に自分で修理してはいけません。道路や隣地へ被害が及ぶ可能性があるときは、速やかに市区町村の空き家担当部署や道路管理者へ連絡してください。

緊急性が高い場合は、警察や消防への連絡が必要になることもあります。

7-2.建築の専門家へ調査を依頼する

外観上は問題がないように見えても、柱や土台が腐食している場合があります。建築士、施工会社、解体会社などへ相談し、次の内容を整理しましょう。

  1. 応急措置が必要か
  2. 修繕して利用できるか
  3. 解体する必要があるか
  4. 解体費はいくらか
  5. 接道や再建築に問題がないか
  6. 売却または活用できるか

解体会社だけでは、売却や再建築の判断まで十分に比較できないことがあります。不動産、建築、税務、登記の各視点から確認することが大切です。

7-3.行政からの通知を放置しない

自治体から指導、勧告、命令などの通知が届いた場合は、内容と期限を確認し、早めに担当部署へ連絡しましょう。

費用を準備できない、共有者と連絡が取れない、相続登記が終わっていないなどの事情があっても、通知を放置すると問題は解決しません。

自治体によっては、解体費の補助制度、空き家バンク、専門家相談などを設けています。対象条件や受付期間があるため、工事を契約する前に確認してください。

総務省統計局の2023年住宅・土地統計調査の確報集計によると、全国の空き家は約900万2千戸、空き家率は13.8%です。

また、賃貸用、売却用、別荘などの二次的住宅を除く空き家は約385万6千戸となっています。

項目2023年の確報値
総住宅数約6,504万7千戸
空き家数約900万2千戸
空き家率13.8%
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家約385万6千戸
同空き家率5.9%

空き家のすべてが危険な放置住宅というわけではありません。賃貸募集中の住宅や売却中の住宅なども統計上の空き家に含まれます。

一方で、利用目的のない住宅や、相続後に方針が決まっていない実家が増えれば、適切に管理されない空き家が増える可能性があります。

空き家問題は、建物が崩れてから始まるのではありません。相続、施設への入居、転居などによって住む人がいなくなった時点から、管理方法と将来の方針を考える必要があります。

呉市で起きた空き家の倒壊では、建物の一部が市道をふさぎ、市が緊急代執行による撤去を始めました。

報道では雨の影響が考えられていますが、建物が倒壊した詳しい原因までは明らかになっていません。ただし、長期間管理されていない空き家は劣化に気づきにくく、大雨や台風をきっかけに危険が表面化する可能性があります。

空き家を所有または相続したら、次の順番で確認しましょう。

  1. 土地と建物の名義を確認する
  2. 建物の劣化や周囲への危険を確認する
  3. 売却、賃貸、解体、土地活用の可能性を比較する
  4. 修繕費、解体費、税金を含めて試算する
  5. 家族で判断期限を決める

行政が撤去したとしても、所有者の費用負担がなくなるとは限りません。管理不全空家等や特定空家等として勧告を受ければ、住宅用地特例が適用されなくなる場合もあります。

危険な状態になる前に現状を調査し、活用できるうちに方針を決めることが重要です。

出典・参考資料