賃貸併用住宅は、自宅と賃貸住宅を一つの建物にまとめ、家賃収入によって住宅ローンの返済負担を軽減できる可能性がある住まいです。
一方で、大手ハウスメーカーによる高い建築費を、相場より高い想定家賃と継続的な満室で補う計画では、1室の空室や借り上げ家賃の減額だけで収支がマイナスになることがあります。
この記事では、賃貸併用住宅で起こりやすい9つの失敗と、空室、修繕費、融資、防音、断熱、共有名義、将来の自宅転用まで、建築前に確認したいポイントを解説します。
賃貸併用住宅で起こりやすい9つの失敗を解説。大手ハウスメーカーの高い建築費、相場より高い想定家賃、空室、借り上げ家賃の減額、修繕費、防音、共有名義まで確認します。

賃貸併用住宅は、自宅と賃貸住宅を一つの建物にまとめ、家賃収入によって住宅ローンの返済負担を軽減できる可能性がある住まいです。
一方で、大手ハウスメーカーによる高い建築費を、相場より高い想定家賃と継続的な満室で補う計画では、1室の空室や借り上げ家賃の減額だけで収支がマイナスになることがあります。
この記事では、賃貸併用住宅で起こりやすい9つの失敗と、空室、修繕費、融資、防音、断熱、共有名義、将来の自宅転用まで、建築前に確認したいポイントを解説します。
賃貸併用住宅で失敗を防ぐには、満室時の表面上の収支ではなく、家賃下落、空室、修繕、金利上昇を含めた長期収支を確認することが重要です。
賃貸併用住宅そのものが危険なのではありません。住宅としての計画と賃貸事業としての計画を分けず、楽観的な条件で進めることが失敗につながります。
賃貸併用住宅は、自宅部分と賃貸部分が一つの建物に入る住宅です。
賃貸部分から家賃収入を得られるため、土地を所有している人や、建築費の高い都市部で住宅を建てたい人に検討されています。
しかし、通常の注文住宅とは異なり、次の二つの側面を持ちます。
| 側面 | 主な検討事項 |
|---|---|
| 自宅 | 住宅ローン、間取り、耐震性、断熱性、家族の生活動線 |
| 賃貸事業 | 家賃、空室率、管理費、修繕費、入居者募集、賃貸借契約 |
自宅として暮らしやすくても、賃貸経営が赤字になれば家計の負担が増えます。
反対に、賃貸効率だけを優先すると、自宅が狭くなったり、入居者との生活動線が重なったりする可能性があります。
賃貸併用住宅の提案では、完成直後の満室家賃を使った収支が示されることがあります。
しかし、長期的には次の変化を考える必要があります。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家が900万戸となっています。地域や物件によって状況は異なりますが、新築であれば自動的に入居者が集まるとは限りません。
最初の失敗例は、大手ハウスメーカーで賃貸併用住宅を建てたものの、建築費が高く、想定家賃も周辺相場より高く設定されていたケースです。
大手ハウスメーカーには、耐震性、断熱性、長期保証、アフターサービス、施工体制などの強みがあります。一方で、建築費が高くなれば、借入額と毎月の返済額も増えます。
その収支を成立させるために周辺相場より高い家賃を設定すると、満室でも利益がほとんど残らない計画になることがあります。
例えば、賃貸住戸が3戸ある場合の簡易的な収支は次のとおりです。
| 収支項目 | 月額 |
|---|---|
| 想定家賃 12万5,000円×3戸 | 37万5,000円 |
| ローン返済・管理費・修繕積立・税金など | マイナス35万円 |
| 満室時の収支 | プラス2万5,000円 |
| 1戸が空室になった場合の収支 | マイナス10万円 |
| 借り上げ家賃が15%下がった場合の収支 | マイナス3万1,250円 |
この計画では、満室時でも毎月2万5,000円しか残りません。
1戸でも空室が続けば、毎月約10万円を給与収入などから補う必要があります。
一括借り上げによって空室時の収入減少を抑えられたとしても、借り上げ家賃が見直されれば、満室状態のまま収支がマイナスへ転じる可能性があります。
問題は、大手ハウスメーカーで建てること自体ではありません。高い建築費に対して、相場より高い家賃と継続的な満室を前提にしなければ、収支が成立しないことです。
新築時は、築年数の古い周辺物件より高い家賃で入居者が決まる場合があります。しかし、新築という優位性は時間の経過とともに薄れていきます。
また、建物の施工会社が大手ハウスメーカーであっても、その建築費を家賃へそのまま上乗せできるとは限りません。
入居者は、主に次の条件から物件を比較します。
周辺の成約相場が月額10万5,000円であるにもかかわらず、収支を成立させるために12万5,000円で計画しても、入居者が決まらなければ意味がありません。
家賃を下げて募集すると、今度はローン返済や維持費を家賃収入だけで賄えなくなる可能性があります。
賃貸経営では、次のような理由で家賃が入らない期間が発生します。
建築時の家賃査定が月額12万5,000円でも、10年後や20年後まで同じ家賃で貸せるとは限りません。
収支計画では、満室時だけでなく、少なくとも次の条件を確認する必要があります。
| 確認するケース | 収支へ反映する条件 |
|---|---|
| 満室ケース | 想定家賃ですべての住戸が稼働 |
| 相場家賃ケース | 地域の成約相場まで家賃を下げる |
| 一部空室ケース | 1戸が6か月または1年間空室 |
| 家賃下落ケース | 5年後・10年後に家賃が10%から20%下落 |
| 借り上げケース | 手数料と借り上げ家賃の減額を反映 |
| 複合悪化ケース | 空室、家賃下落、金利上昇、修繕費を同時に反映 |
建築会社が提示する家賃査定だけではなく、計画地周辺で実際に賃貸管理を行っている複数の会社にも確認しましょう。
確認したいのは、最も高く貸せる可能性がある家賃ではなく、長期的に入居者が決まりやすい家賃です。
大手ハウスメーカーの提案を検討するときは、建築費、想定家賃、空室率、借り上げ条件を分けて確認することが重要です。
「満室なら返済できる」ではなく、「1戸が空室でも家計に無理がなく、家賃が下がっても長期保有できるか」を基準に判断しましょう。
家賃収入から差し引かれるのは、ローン返済だけではありません。
賃貸併用住宅では、継続的に次の費用が発生します。
国土交通省の計画修繕ガイドブックでも、屋根、外壁、給排水管、外構、室内設備などの点検と修繕を計画的に行う重要性が示されています。
次は、賃貸部分が2戸ある場合の簡易的な試算例です。
| 収支項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 満室時家賃収入 月9万円×2戸 | 216万円 |
| 入居率85%を反映した家賃収入 | 183万6,000円 |
| 管理委託費 家賃収入の5% | マイナス9万1,800円 |
| 入居者募集・原状回復費 | マイナス18万円 |
| 修繕積立 | マイナス30万円 |
| 税金・保険の賃貸部分相当額 | マイナス25万円 |
| 共用電気・清掃・その他 | マイナス8万円 |
| 賃貸部分に対応する年間返済額 | マイナス120万円 |
| 年間キャッシュフロー | マイナス26万5,800円 |
満室時の家賃216万円と年間返済額120万円だけを比較すると、96万円の余裕があるように見えます。
しかし、空室と運営費を含めると、年間約27万円の持ち出しです。設備が故障した年や退去が重なった年は、さらに収支が悪化する可能性があります。
なお、手元のお金を確認するキャッシュフローと、税務上の不動産所得は同じではありません。
不動産所得は原則として総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。借入金の元本返済、利息、減価償却費、修繕費などは、それぞれ扱いが異なります。
具体的な税務判断は税理士へ確認しましょう。
賃貸併用住宅では、自宅部分と賃貸部分の床面積、建物の構造、借入名義などによって、利用できる融資が変わることがあります。
一般的な住宅ローンと賃貸住宅向けローンでは、次の条件が同じとは限りません。
例えば、住宅金融支援機構の子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資では、自宅または非住宅部分の合計が建物全体の延べ面積の4分の1以下であれば、一定の条件のもとで建物全体を融資対象にできる仕組みがあります。
これは一例であり、住宅ローンを利用できる面積条件や家賃収入の算入方法は、金融機関や商品によって異なります。
建築会社から「住宅ローンが使える」と説明されただけで設計を進めるのではなく、金融機関へ直接確認することが大切です。
金融機関による事前審査は、概算間取りと概算収支ができた段階で行います。
最終的な建築契約の前には、確定した設計内容が融資条件を満たしているか再確認しましょう。
サブリース契約や一括借り上げを利用すると、入居者募集や家賃回収などの負担を減らせる可能性があります。
ただし、「30年一括借り上げ」という契約期間と、「30年間同じ家賃が支払われる」という意味は同じではありません。
国土交通省のガイドラインや特定賃貸借契約の重要事項説明書では、家賃が減額される可能性などを契約前に説明することが求められています。
確認したい主なリスクは次のとおりです。
「家賃保証」という言葉だけで判断せず、借り上げ家賃が10%、15%、20%下がった場合の収支も作成しましょう。
賃貸併用住宅では、入居者の足音、話し声、テレビ、ドアの開閉音、給排水音などが、所有者家族の生活へ直接影響することがあります。
特に注意したいのは、次のような配置です。
建築基準や融資の技術基準に適合していても、所有者や入居者が期待する静かさを必ず確保できるとは限りません。
| 場所 | 起こりやすい問題 | 設計時の確認事項 |
|---|---|---|
| 上下階の床 | 足音、椅子を引く音、物を落とす音 | 床構造、仕上げ材、天井下地、防振対策 |
| 住戸間の壁 | 話し声、テレビ、生活音 | 界壁の構成、コンセント位置、配管貫通部 |
| 水回り | 排水音、給水音、換気扇の音 | 配管経路、寝室との距離、防音材 |
| 玄関・階段 | ドアの開閉音、足音 | 自宅との位置関係、緩衝材、床構造 |
| 室外機・設備 | 振動音、低周波音 | 設置場所、防振架台、隣接する部屋 |
国土交通省では、賃貸住宅の断熱性能向上や遮音対策に関する大家向けガイドブックも公開しています。
「防音仕様です」という説明だけではなく、床、壁、天井、配管の構成を図面と仕様書で確認することが大切です。
建築費を抑えるため、自宅部分だけ断熱性能や設備仕様を高くし、賃貸部分の性能を最低限にするケースがあります。
しかし、断熱性能が低いと、次の問題につながる可能性があります。
2025年4月以降に着工する新築住宅は、一部の例外を除き、省エネ基準への適合が義務付けられています。
ただし、法令上の基準に適合することと、将来も入居者から選ばれる性能であることは同じではありません。
2024年4月からは、新築建築物の販売・賃貸広告における省エネ性能表示制度も始まっています。断熱性能やエネルギー消費性能は、入居者が物件を比較する材料になります。
賃貸部分の性能向上には建築費がかかります。
建築時の費用だけでなく、家賃、空室期間、退去率、修繕費への影響も含めて判断する必要があります。
賃貸併用住宅では、所有者と入居者が同じ建物で暮らします。
玄関、階段、駐輪場、駐車場、ゴミ置き場などの配置が悪いと、日常的に顔を合わせたり、お互いの生活時間が伝わったりすることがあります。
よくある失敗は次のとおりです。
同じ建物に住んでいても、所有者がすべての管理を直接行う必要はありません。
次の業務を管理会社へ委託すると、所有者と入居者の関係を整理しやすくなります。
ただし、管理委託費がかかるため、収支計画へ反映させておきましょう。
親が所有する土地に子どもが賃貸併用住宅を建てる場合や、夫婦・兄弟で土地や建物を共有する場合は、権利関係の整理が欠かせません。
建築時は家族関係が良好でも、相続、離婚、認知症、死亡、持分売却などによって状況が変わる可能性があります。
民法では、共有物の管理に関する事項は、原則として各共有者の持分価格の過半数で決めるとされています。
ただし、建物の増改築、長期間の賃貸借、売却、抵当権設定などは、行為の内容によって必要な同意が異なる可能性があります。
家族間の口約束だけにせず、少なくとも次の内容を書面で整理しましょう。
| 確認項目 | 決めておきたい内容 |
|---|---|
| 所有権 | 土地と建物を誰の名義にするか |
| 借入 | 債務者、連帯債務者、担保提供者 |
| 家賃 | 受取人、管理口座、持分ごとの分配 |
| 費用 | ローン、税金、保険、修繕費の負担 |
| 管理 | 入居者募集、契約、修繕を決定する人 |
| 相続 | 持分を誰に承継させるか |
| 売却 | 売却の判断方法と代金の分配 |
| 解消 | 共有状態を解消する場合の方法 |
共有不動産や親族間の土地利用は、個別の条件によって法的・税務上の扱いが変わります。
建築前に弁護士、司法書士、税理士、金融機関などへ確認することが重要です。
賃貸部分を、将来は子ども世帯、親世帯、介護スペース、自宅の一部として使う計画もあります。
しかし、普通借家契約では、所有者が「自分で使いたい」と考えただけで、契約更新を自由に拒絶できるとは限りません。
借地借家法では、貸主による更新拒絶や解約申入れについて、次の事情などを考慮した正当事由が必要とされています。
将来の自宅利用時期が決まっている場合は、定期建物賃貸借を検討する方法があります。
定期建物賃貸借は、期間満了によって契約が終了し、原則として更新がない契約です。
ただし、契約書を作成するだけでなく、更新がなく期間満了で終了することを、契約前に書面または一定の電磁的方法で説明するなど、法令上の手続きが必要です。
期間が1年以上の場合は、期間満了の1年前から6か月前までの間に、契約終了の通知が必要になる点にも注意が必要です。
契約方法を誤ると、更新がない旨の定めが認められない可能性があります。また、定期借家は普通借家より入居者を募集しにくい場合もあります。
将来の自宅転用、入居者募集、家賃への影響を比較し、管理会社や法律の専門家と契約方法を検討しましょう。
収支計画は、一つの想定だけではなく、少なくとも次の3つを作成します。
| 想定 | 計算条件 |
|---|---|
| 標準ケース | 周辺相場に基づく家賃と通常の空室率 |
| 悪化ケース | 家賃10%下落、空室期間増加、修繕費増加 |
| ストレスケース | 一部住戸の長期空室、金利上昇、設備交換が重なる |
賃貸併用住宅は、完成直後の1年間だけ黒字でも十分ではありません。
給与収入で赤字を補填し続けなければならない計画は、家賃収入によって住居費を軽減するのではなく、賃貸経営の赤字を家計で負担する状態になる可能性があります。
表面利回りは、一般的に年間の満室想定家賃を建築費や事業費で割って計算します。
しかし、表面利回りには、空室、運営費、修繕費、税金、保険などが十分に反映されない場合があります。
確認すべきなのは、次の3つです。
建築会社ごとに収支条件が異なると、建物価格や利回りを正しく比較できません。
想定家賃、空室率、管理費、募集費、修繕積立、金利を同じ条件にそろえて比較しましょう。
| 向いている可能性がある人 | 慎重に検討したい人 |
|---|---|
| 賃貸需要が安定した土地を所有している | 家賃査定を1社からしか取得していない |
| 空室や修繕に備えた資金がある | 満室家賃でなければ返済できない |
| 長期保有を前提に考えられる | 数年以内に売却する可能性が高い |
| 賃貸経営の手間やリスクを理解している | 管理や入居者対応を一切したくない |
| 家族間の権利関係を整理できる | 共有者や相続人と話し合えていない |
| 自宅と賃貸の性能を両立できる | 建築費を抑えるため賃貸性能を下げたい |
| 家賃が下がっても返済を続けられる | 相場より高い家賃でなければ黒字にならない |
| 複数社を同じ収支条件で比較できる | 建築会社の収支計画だけで判断している |
賃貸併用住宅そのものが危険なのではありません。
土地の需要、建築費、融資、住宅性能、家族の権利関係に合わない計画を進めることが失敗につながります。
賃貸併用住宅の提案を比較するときは、建築費と想定家賃だけで判断しないようにしましょう。
| 比較項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 建築費 | 本体工事、付帯工事、外構、設計、諸費用の総額 |
| 家賃査定 | 査定根拠、成約事例、空室期間、将来の家賃下落 |
| 空室耐性 | 1室が6か月・1年間空室になった場合の収支 |
| 借り上げ | 家賃の見直し、免責期間、修繕負担、解約条件 |
| 住宅性能 | 耐震、断熱、遮音、防火、劣化対策 |
| 間取り | 自宅と賃貸の動線、採光、収納、プライバシー |
| 修繕 | 点検周期、交換費、大規模修繕、保証範囲 |
| 管理 | 管理委託費、入居者対応、滞納対応、退去精算 |
| 融資 | 金利、返済期間、面積条件、家賃算入、担保 |
| 出口戦略 | 売却、自宅転用、二世帯住宅への変更 |
各社で想定家賃、空室率、修繕費、借入条件が異なると、建物の提案を正しく比較できません。
比較条件をそろえた上で、次の順番で判断しましょう。
賃貸併用住宅で失敗する主な原因は、高い建築費を相場より高い家賃で補う収支計画、空室や修繕費の見落とし、住宅性能や権利関係の確認不足です。
特に、大手ハウスメーカーで建築費が高くなった結果、満室でもわずかな利益しか残らず、1室の空室や借り上げ家賃の減額だけで赤字へ転じる計画には注意が必要です。
建築前に確認したいのは、次の3点です。
賃貸併用住宅は、家賃収入を得られる注文住宅であると同時に、長期的な不動産賃貸事業です。
建築会社の提案だけで決めず、複数の管理会社、金融機関、税理士、司法書士、弁護士など、それぞれ異なる立場から確認した上で判断しましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。税務・法律・融資・収益性の判断は個別に異なります。具体的な計画は税理士・弁護士・金融機関等へご確認ください。