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相続した土地

借地権・底地を相続したときに確認すべき契約、地代、更新、売却、土地活用の選択肢を整理。地主の承諾や相続税評価、同時売却、専門家へ相談すべき場面まで一般論として解説します。

更新 2026.08.03読了目安 31分監修:潟沼勇気

相続財産に借地権や底地が含まれていると、「そのまま保有するべきか」「売却できるのか」「建て替えや土地活用はできるのか」と判断に迷うことがあります。

借地権と底地は、同じ土地について借地人と地主がそれぞれ持つ権利です。通常の所有地とは異なり、地代、契約期間、更新、建て替え、譲渡承諾などを確認しなければなりません。

この記事では、借地権と底地の違い、相続直後に確認すること、保有・売却・土地活用の選択肢を比較します。

なお、借地契約の解釈や承諾の要否は、契約内容、契約時期、登記、過去の合意などによって判断が変わります。本記事は一般的な情報を整理するものであり、個別の法律判断や交渉を行うものではありません。紛争や契約上の判断が必要な場合は、弁護士などの専門家へ相談してください。

借地権・底地を相続したときは、すぐに売却や建て替えを決めるのではなく、まず権利関係と契約内容を確認することが重要です。

  • 借地権を相続した場合は、地代、残存期間、更新条件、譲渡・建て替えの承諾条件を確認する
  • 底地を相続した場合は、地代収入だけでなく、固定資産税、契約管理、将来の更新や返還まで含めて判断する
  • 借地権と底地を別々に売るより、地主と借地人が協力して同時売却した方が条件を整理しやすい場合がある
  • 相続税評価額と実際の売却価格は同じではないため、税務評価と市場査定を分けて確認する
  • 契約の解釈、地代・更新・承諾を巡る対立、共有相続がある場合は、当事者だけで進めず専門家へ相談する

最初に行うべきことは、「相続したのが借地権なのか、底地なのか」「普通借地権なのか、定期借地権なのか」を特定することです。

借地権と底地は、同じ土地を利用する借地人と、土地を所有する地主の権利をそれぞれ表したものです。

比較項目借地権底地
権利を持つ人借地人土地所有者である地主
所有するもの土地を借りて建物を所有・利用する権利借地権が設定された土地の所有権
主な収支地代の支払い、建物の維持費地代収入、土地の固定資産税など
土地の自由な利用契約の範囲内で利用借地権が存続している間は利用が制限される
売却時の主な確認地主の承諾、契約条件、建物の状態借地契約、地代、借地人、残存期間
土地活用時の主な確認建て替え・用途変更・増改築の条件借地権の解消や借地人との合意

1-1.借地権とは

借地借家法上の借地権は、建物の所有を目的とする地上権または土地賃借権を指します。

親が第三者の土地を借り、その土地に自宅やアパートなどの建物を所有していた場合、相続財産には建物だけでなく、借地権が含まれている可能性があります。

ただし、駐車場、資材置き場、農地など、建物の所有を目的としていない土地利用には、借地借家法上の借地権が成立していない場合があります。

1-2.底地とは

底地とは、借地権が設定されている土地の所有権を指す一般的な呼び方です。

親が所有する土地を第三者へ貸し、借地人がその上に建物を所有している場合、相続人が引き継ぐ土地は底地となります。

土地の所有者であっても、借地権が存続している間は、借地人の建物を一方的に取り壊したり、土地を自由に建て替えたりできるわけではありません。

1-3.登記だけでは契約内容まで分からない

土地と建物の登記事項証明書を取得すると、所有者、地目、地積、抵当権などを確認できます。しかし、次のような事項は登記だけでは分からないことがあります。

  • 地代の金額と支払日
  • 契約の開始日と更新履歴
  • 更新料や承諾料に関する取り決め
  • 建物の用途や構造の制限
  • 増改築や建て替えに関する特約
  • 借地権の譲渡や転貸に関する条件
  • 敷金、保証金、預り金の有無

登記事項証明書と借地契約書の両方を確認することが必要です。

借地権・底地は、相続人同士の話し合いを始める前に、権利と収支を一覧にすることが重要です。

2-1.土地と建物の所有者を確認する

まず、土地と建物それぞれの登記事項証明書を取得します。

土地の名義建物の名義考えられる状態
被相続人被相続人通常の所有地である可能性
第三者被相続人借地権付き建物である可能性
被相続人第三者底地である可能性
複数人の共有被相続人または第三者共有持分と借地関係の両方を確認する必要がある

住所と登記上の地番は異なることがあります。固定資産税の納税通知書、公図、地積測量図、建物図面なども照合しましょう。

2-2.借地契約書と過去の資料を探す

確認したい資料は次のとおりです。

  • 借地契約書と更新契約書
  • 地代の領収書、振込履歴、通帳
  • 更新料や承諾料を支払った記録
  • 地主または借地人との手紙、メール、覚書
  • 固定資産税・都市計画税の納税通知書
  • 建物の確認済証、検査済証、設計図
  • 境界確認書、測量図
  • 相続税申告書や過去の不動産評価資料
  • 火災保険、住宅ローン、抵当権に関する資料

契約書が見つからない場合でも、直ちに借地権がないと判断することはできません。地代の支払い、建物の登記、利用開始時期、当事者間のやり取りなどから確認が必要になるため、弁護士や司法書士へ相談することを検討します。

2-3.普通借地権か定期借地権かを確認する

借地権は契約の種類によって、更新や返還の考え方が異なります。

借地権の種類主な特徴相続時の注意点
普通借地権契約更新の仕組みがある契約開始日、更新時期、更新拒絶に関する事情を確認
一般定期借地権50年以上の期間を設定し、期間満了で終了する仕組み残存期間、建物撤去、土地返還条件を確認
事業用定期借地権等事業用建物を目的とし、存続期間は10年以上50年未満居住用途への変更はできないため利用計画に注意
建物譲渡特約付借地権30年以上経過後に建物を地主へ譲渡する特約を設ける譲渡時期、価格、建物利用の継続条件を確認
旧借地法による借地権1992年8月1日より前から続く契約で問題になることがある現行法だけで判断せず契約の成立時期を確認

「契約書に30年と書いてあるから必ず30年で返還する」とは限りません。適用される法律、更新の経緯、建物の状態などによって判断が変わるため、契約終了が近い場合は早めの確認が必要です。

2-4.相続放棄を検討する場合は期限に注意する

借地権や底地に価値があるように見えても、次のような負担が残っている場合があります。

  • 未払い地代
  • 固定資産税の滞納
  • 建物の解体費
  • 土地返還時の原状回復費
  • 境界や契約を巡る紛争
  • 借入金や抵当権

相続放棄は、不要な不動産だけを選んで放棄する手続ではありません。原則として、資産と負債を含む相続全体について判断します。

裁判所の案内では、相続の承認または放棄を判断する期間は、自分のために相続が開始したことを知った時から原則3か月です。調査しても判断できない場合には、家庭裁判所へ期間伸長を申し立てられることがあります。

3-1.相続による承継と売買による譲渡は異なる

相続は、借地権を第三者へ売買する譲渡とは異なります。一般的には、相続によって借地権を引き継ぐこと自体について、地主の承諾を求める場面とは区別されます。

ただし、相続後も地代の請求先や連絡先が以前のままだと、支払いの行き違いが起こる可能性があります。相続人が確定した段階で、地主へ次の事項を連絡するとよいでしょう。

  • 借地人が亡くなったこと
  • 借地権と建物を相続した人
  • 今後の連絡先
  • 地代の支払方法
  • 建物を使用する予定
  • 売却や建て替えを検討しているか

相続承諾料などの支払いを求められた場合は、その場で支払いを約束せず、契約条項と請求の根拠を確認します。個別の支払義務については、弁護士へ相談してください。

3-2.相続登記を進める

借地上の建物の所有権を相続した場合、その所有権について相続登記を進めます。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産の所有権を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請することが原則となりました。

借地権そのものについて登記がされている場合は、その権利の種類や名義変更の方法も確認が必要です。土地賃借権、地上権、建物所有権では手続が異なるため、司法書士へ確認すると安心です。

3-3.遺産分割で安易に共有名義にしない

借地権と借地上の建物を複数の相続人で共有すると、将来の売却、建て替え、賃貸、修繕などで合意形成が必要になります。

特に、居住を希望する相続人と売却を希望する相続人が分かれている場合は、共有状態が長期化しやすくなります。

可能であれば、次の方法を比較します。

  • 1人が借地権と建物を相続し、ほかの相続人へ代償金を支払う
  • 借地権付き建物を売却し、売却代金を分ける
  • 地主へ買い取りを相談する
  • 底地も含めた同時売却を相談する

代償金の設定や遺産分割の内容によって税務上の取扱いが変わる場合があるため、税理士への確認も必要です。

4-1.借地権を相続した人は地代負担を確認する

借地権を相続して建物を使用しなくても、借地契約が続く間は地代が発生する可能性があります。

借地人側では、次の年間費用を整理します。

  • 地代
  • 建物の固定資産税・都市計画税
  • 火災保険料
  • 建物の修繕費
  • 空き家の管理費
  • 将来の解体費や原状回復費

「相続した家に住まないから費用はかからない」とは限りません。地代を滞納すると契約関係に影響する可能性があるため、支払先が分からない場合も放置せず確認しましょう。

4-2.底地を相続した人は手残りを計算する

底地を保有する場合は、地代収入から土地の固定資産税などを差し引いて、実際の手残りを確認します。

年間手残りの簡易的な考え方は次のとおりです。

年間地代収入-固定資産税・都市計画税-管理費-専門家費用など=年間手残り

さらに、現在の売却可能価格を基準に、次の利回りも確認します。

年間手残り÷底地の想定売却価格×100=底地保有の実質利回りの目安

相続税評価額を分母にすると、実際に保有を続けるべきか判断しにくいことがあります。市場での売却可能価格と比較することがポイントです。

4-3.地代は一方的に変更できるとは限らない

借地借家法では、土地に対する税負担の増減、土地価格や経済事情の変動、近隣の地代との比較などにより地代が不相当となった場合、当事者が増減を請求できる仕組みがあります。

ただし、請求した金額がそのまま確定するとは限りません。現在の地代、直近の合意時期、契約条項、土地価格、固定資産税、近隣事例などを踏まえた検討が必要です。

地代について合意できない場合には、調停や訴訟が問題になることがあります。地主側も借地人側も、感情的な交渉になる前に資料を整理し、弁護士や不動産鑑定士へ相談することが考えられます。

5-1.更新時期と残存期間を確認する

更新を考える際は、次の項目を一覧にします。

  • 契約開始日
  • 現在の契約満了日
  • 過去の更新日
  • 普通借地権か定期借地権か
  • 更新料に関する条項
  • 地代改定に関する条項
  • 建物の構造と築年数
  • 建て替えや増改築の予定
  • 土地を返還するときの条件

普通借地権と定期借地権では、期間満了時の扱いが大きく異なります。名称だけでなく、契約書の内容と作成時期を確認してください。

5-2.更新料の有無や金額を一律に判断しない

更新料については、すべての借地契約に共通する一律の金額が法律で決められているわけではありません。

実際には、次の事情によって判断が変わる可能性があります。

  • 契約書に更新料の記載があるか
  • 過去の更新時に支払っているか
  • 地主と借地人の合意があるか
  • 地域にどのような取引慣行があるか
  • 更新と同時に地代や契約条件を変更するか

請求された金額が相場より高い、契約書に記載がない、過去に支払った記録がないなどの事情がある場合は、支払いを拒否または承諾する前に専門家へ確認しましょう。

5-3.更新と建て替えを同時に考える

建物が老朽化している場合、更新だけを行っても、数年後に建て替えの相談が必要になることがあります。

借地契約に増改築禁止特約や建て替え承諾に関する条項がある場合は、地主との合意が必要になる可能性があります。

裁判所では、一定の場合に次のような借地非訟事件が扱われています。

  • 借地条件の変更
  • 増改築の許可
  • 更新後の建物再築の許可
  • 土地賃借権の譲渡・転貸の許可

裁判所への申立てが可能か、どのような条件が付くかは個別事情で異なります。借地非訟の代理人を依頼する場合は弁護士に限られるため、対立が見込まれるときは早めに相談しましょう。

選択肢メリット主な注意点
自分や家族が住む住居として引き続き利用できる地代、修繕、更新、将来の返還を確認
建物を賃貸する家賃収入を得られる可能性がある契約用途、転貸・賃貸の制限、改修費を確認
建て替える土地を継続利用できる建て替え承諾、借地条件、承諾に伴う費用を確認
借地権付き建物を売る現金化できる土地賃借権型では地主の承諾が問題になる
地主へ売却する権利関係をまとめて解消しやすい価格条件がまとまるとは限らない
底地を買い取る完全所有権に近い状態へ整理できる購入資金、価格、税金、融資を確認
底地と同時に売る通常の土地として売却しやすくなる可能性地主との合意と売却代金の配分が必要
契約を終了して返還する将来の地代負担をなくせる解体費、原状回復、返還条件を確認

6-1.借地権付き建物を売却する

土地賃借権型の借地権で、借地上の建物を第三者へ売却すると、土地賃借権も移転するため、地主の承諾が必要になるのが一般的です。

地主の承諾が得られない場合、借地借家法に基づき、裁判所へ地主の承諾に代わる許可を申し立てられる場合があります。ただし、許可の可否、条件、財産上の給付などは個別に判断されます。

売却前に確認する項目は次のとおりです。

  • 借地権の種類
  • 契約残存期間
  • 地代と滞納の有無
  • 地主の譲渡承諾
  • 譲渡承諾に伴う条件
  • 建物の状態と再建築条件
  • 住宅ローンや抵当権
  • 境界と借地範囲
  • 将来の更新条件

6-2.地主へ借地権を買い取ってもらう

地主が将来的に土地を自分で利用したい場合、借地権と建物の買い取りに応じる可能性があります。

ただし、地主に買い取りを強制できるとは限りません。借地権の価格、建物の価格、解体費、未払い地代、引き渡し時期などを話し合う必要があります。

価格交渉が対立に発展している場合、不動産会社が法律判断や紛争交渉を代行することはできません。弁護士へ相談してください。

6-3.底地を買い取って完全所有に近づける

借地人が地主から底地を購入すると、借地権と土地所有権を一つにまとめられます。

完全所有権となれば、将来の地代や更新に関する負担がなくなり、売却や建て替えもしやすくなる可能性があります。

一方で、底地の購入代金、不動産取得税、登録免許税、登記費用、融資費用などが必要です。購入後の土地価格だけでなく、総費用を確認しましょう。

6-4.建物を解体する前に出口を決める

借地上の古い建物を使わない場合でも、先に解体することが最適とは限りません。

建物を解体すると、借地権の対抗関係、売却方法、融資、土地返還条件などに影響する可能性があります。地主へ返還するのか、建て替えるのか、借地権を売るのかを整理してから解体を検討してください。

選択肢メリット主な注意点
そのまま保有する継続的な地代収入を得られる利回り、税負担、契約管理を確認
地代を見直す収支を改善できる可能性がある一方的に希望額へ変更できるとは限らない
借地人へ売却する権利関係を解消しやすい借地人の資金力と価格条件を確認
第三者へ底地として売却する早期に現金化できる可能性がある買主が限られ、価格が低くなる場合がある
借地権を買い取る完全所有権として活用しやすくなる買取資金、建物処理、借地人との合意が必要
借地人と同時売却する更地に近い条件で売却できる可能性がある売却代金の配分と費用負担を決める必要がある
将来の返還を待つ返還後に土地活用できる可能性がある返還時期が確定しているとは限らない

7-1.地代収入を得ながら保有する

借地人が長期間にわたって地代を支払っており、契約関係も安定している場合は、底地を保有する選択肢があります。

ただし、額面上の地代収入だけでなく、次の項目を確認します。

  • 地代の支払状況
  • 固定資産税・都市計画税
  • 契約更新の時期
  • 借地人の年齢や建物の状態
  • 境界や借地面積
  • 敷金、保証金、預り金
  • 将来の相続人による管理負担
  • 現在の底地売却価格

地代が低く管理負担が大きい場合、保有より売却が適することもあります。

7-2.借地人へ底地を売却する

借地人にとって底地を購入することには、地代負担がなくなり、土地と建物を一体で売却しやすくなる可能性があるというメリットがあります。

そのため、底地の最初の買主候補として借地人へ意向を確認する方法があります。

ただし、借地人に購入資金がない、価格の考え方が合わない、複数の借地人がいるなどの理由で、売却できないこともあります。

7-3.底地を第三者へ売却する

底地の所有者は、底地を第三者へ売却する方法も検討できます。

ただし、買主は借地契約と地主としての立場を前提に購入を判断するため、通常の更地より買主が限られる傾向があります。

査定時には、次の資料を不動産会社へ提示しましょう。

  • 借地契約書
  • 地代の入金履歴
  • 更新履歴
  • 借地人の数
  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 固定資産税の納税通知書
  • 測量図や公図
  • 敷金や保証金の記録
  • 紛争や滞納の有無

7-4.借地権を買い取って土地活用する

地主が借地権と借地上の建物を買い取れば、土地を一体として活用できる可能性があります。

返還後に考えられる土地活用には、次のようなものがあります。

  • 自宅や二世帯住宅への建て替え
  • 賃貸住宅の建築
  • 賃貸併用住宅の建築
  • 戸建て賃貸
  • 駐車場
  • 事業用地としての貸し出し
  • 更地としての売却

ただし、地主が土地所有者だからといって、一方的に借地権を解消できるわけではありません。借地人との合意、契約期間、更新、建物買取り、移転費用などが問題になることがあります。

借地人と地主が協力し、借地権と底地を一体として同じ買主へ売却する方法です。

買主は土地と建物を一体で取得できるため、借地権または底地だけを購入する場合より検討しやすくなる可能性があります。

8-1.同時売却のメリット

  • 買主の候補が広がる可能性がある
  • 通常の所有権に近い状態で売却できる
  • 借地人と地主の契約関係を同時に解消できる
  • 底地だけ、借地権だけで売るより高い総額になる可能性がある
  • 次世代へ複雑な権利関係を残さずに済む

8-2.事前に決めること

同時売却では、売却価格だけでなく、借地人と地主の間で次の事項を整理します。

  • 売却代金の配分
  • 建物価格と土地価格の内訳
  • 測量費の負担
  • 建物解体費の負担
  • 仲介手数料などの費用負担
  • 地代の精算日
  • 引き渡し時期
  • 契約不適合責任の分担
  • 売却を中止する場合の扱い

借地権割合をそのまま売却代金の配分割合に使えるとは限りません。借地権割合は主に相続税評価で使われる指標であり、市場価格や当事者間の配分とは別に検討する必要があります。

9-1.借地権の相続税評価

国税庁による普通借地権の基本的な評価方法は、次のとおりです。

自用地としての価額×借地権割合=借地権の評価額

例えば、自用地としての相続税評価額が5,000万円、借地権割合が60%の場合、単純計算では次のようになります。

5,000万円×60%=3,000万円

定期借地権等は、残存期間や借地権者に帰属する経済的利益などを基に評価するため、普通借地権とは計算方法が異なります。

9-2.底地の相続税評価

普通借地権が設定された貸宅地の基本的な評価方法は、次のとおりです。

自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合=底地の評価額

先ほどと同じ条件であれば、次の金額になります。

5,000万円-5,000万円×60%=2,000万円

権利相続税評価額の簡易例
借地権3,000万円
底地2,000万円
合計5,000万円

これは相続税評価の簡易例です。定期借地権、地上権、借地権の取引慣行がない地域、法人間の契約、相当の地代を支払っている契約などでは評価方法が異なる場合があります。

9-3.税務評価額は売却価格ではない

借地権割合が60%だからといって、借地権が更地価格の60%で売れるとは限りません。

実際の売却価格には、次の条件が影響します。

  • 地主の承諾が得られるか
  • 契約の残存期間
  • 地代の水準
  • 建て替えや用途の制限
  • 建物の状態
  • 接道や再建築の可否
  • 借地範囲と登記面積
  • 住宅ローンを利用できるか
  • 地主または借地人が買主になるか
  • 借地権と底地を同時売却できるか

相続税申告では税理士による評価、売却判断では借地権・底地の取引に詳しい不動産会社による査定を分けて取得しましょう。

相続した借地権や底地を売却し、譲渡益が出た場合は譲渡所得税などが生じる可能性があります。

基本的な考え方は次のとおりです。

売却代金-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除=課税譲渡所得

相続した土地や借地権の取得費と取得時期は、原則として被相続人のものを引き継ぎます。そのため、相続時の評価額をそのまま取得費にできるとは限りません。

被相続人の取得費が分からない場合は、概算取得費を使う方法がありますが、税負担が大きくなることがあります。購入時の契約書、領収書、建築資料、通帳などを探しましょう。

相続税を支払った人が一定期間内に相続財産を売却した場合、相続税額の一部を取得費へ加算できる特例が適用されることがあります。適用期限や要件があるため、売却契約前に税理士へ確認することが重要です。

11-1.借地権を相続した場合

次の条件に該当する場合は、継続利用を検討しやすいと考えられます。

  • 自分や家族が住む予定がある
  • 地代負担が家計に対して過大ではない
  • 建物の状態が良い
  • 契約期間が十分に残っている
  • 地主との関係が安定している
  • 建て替えや賃貸について話し合える

一方、次の条件では売却や返還を含めた比較が必要です。

  • 誰も住む予定がない
  • 建物の老朽化が進んでいる
  • 地代と維持費の負担が大きい
  • 相続人間で利用方針が決まらない
  • 契約満了が近い
  • 地主との間に地代や更新の問題がある

11-2.底地を相続した場合

次の条件では、保有を検討しやすいと考えられます。

  • 地代が安定して支払われている
  • 税引き前後の利回りに納得できる
  • 契約書と管理記録が整っている
  • 借地人との関係が安定している
  • 将来の返還や買い取りについて見通しがある

次の条件では、売却や権利整理を検討する余地があります。

  • 地代より固定資産税や管理負担が重い
  • 長期間地代を改定していない
  • 相続人が遠方に住んでいる
  • 複数の借地人との契約管理が難しい
  • 契約書や境界が不明確
  • 次世代へ複雑な権利関係を残したくない
  • 借地人が底地の購入を希望している

11-3.比較するときの計算表

比較項目保有個別売却同時売却・権利整理
現金化しないできるできる
継続収入地代または賃料を得られる可能性なくなるなくなる
管理負担続く原則終了原則終了
権利関係継続買主へ引き継ぐ解消しやすい
買主の範囲関係なし限られる場合がある広がる可能性がある
当事者間の調整日常的に必要売却時に必要売却条件と配分の調整が必要
土地活用制限がある買主が判断権利整理後は選択肢が広がる可能性

判断するときは、相続税評価額だけでなく、次の3つの数字を並べましょう。

  1. 今後10年間の税引き前後の手残り
  2. 現在売却した場合の手取り額
  3. 借地権と底地を整理した場合の費用と想定価格

次のような場合は、当事者だけで結論を出さない方がよいでしょう。

  • 借地契約書がない
  • 地代を長期間支払っていない、または受け取っていない
  • 契約名義が亡くなった親や祖父母のまま
  • 地主または借地人の相続人が分からない
  • 更新料や承諾料について意見が分かれている
  • 地主が借地権の存在を認めていない
  • 建て替えや売却の承諾が得られない
  • 借地範囲や境界が不明
  • 相続人が複数いて方針が一致しない
  • 定期借地権の満了が近い
  • 借地権と底地を同時売却したい
  • 相続放棄の期限が迫っている

相談内容によって、適切な専門家が異なります。

専門家主な相談内容
弁護士契約解釈、承諾の要否、地代・更新紛争、相続人間の対立、借地非訟
司法書士土地・建物の相続登記、登記された権利の確認
税理士相続税評価、譲渡所得、取得費加算などの税務
不動産鑑定士地代、借地権、底地などの価格評価
不動産会社市場査定、売却方法、買主探し、土地活用案の比較

不動産会社へ相談する場合も、法律上の争いがある部分は弁護士、税務判断は税理士へ切り分けることが重要です。

借地権・底地を相続したときは、一般的な土地と同じ感覚で売却や土地活用を進めることはできません。

借地権を相続した場合は、地代、契約期間、更新、建て替え、譲渡承諾を確認します。底地を相続した場合は、地代収入、固定資産税、管理負担、借地人との契約、将来の返還や売却を確認します。

選択肢は、単純な保有か売却だけではありません。

  • 借地権を継続利用する
  • 底地を地代収入のある資産として保有する
  • 借地人または地主へ売却する
  • 借地権と底地を同時に売却する
  • 一方の権利を買い取って完全所有に近づける
  • 権利整理後に住宅や賃貸物件を建てる

まずは、登記事項証明書、借地契約書、地代の履歴、固定資産税、更新履歴を集め、保有した場合の手残りと売却した場合の手取りを比較しましょう。

契約上の権利義務や紛争については弁護士、相続登記は司法書士、相続税・譲渡所得は税理士へ確認したうえで判断することが大切です。

出典・参考資料