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資金計画・住宅ローン

金利が上がれば住宅価格は下がるのでしょうか。2026年の不動産市場に関する分析と公的資料をもとに、価格が下がりにくい理由、成約件数・在庫の変化、住宅ローン返済への影響を解説。注文住宅を今買うか待つか、土地・建物・金利を合わせた判断方法も紹介します。

更新 2026.10.05読了目安 19分監修:潟沼勇気

「金利が上がれば、家や土地は安くなるのでは」「住宅価格が下がるまで、家づくりを待った方がよいのでは」と考えている方もいるでしょう。

金利上昇は不動産価格を押し下げる要因ですが、それだけで住宅や土地がすぐに値下がりするとは限りません。 建築費、地域の需要、売り手の事情なども価格に影響するためです。

また、物件価格が下がっても、住宅ローン金利が上がれば毎月の返済負担が増える場合があります。

この記事では、野村證券の2026年5月の市場分析、第一ライフ資産運用経済研究所の同年9月のレポート、公的資料をもとに、不動産市場の読み方と家づくりの予算への影響を整理します。

  • 金利上昇によって住宅を購入できる金額は小さくなりやすい一方、建築費や供給の制約が価格を下支えすることがあります。
  • 市場の変化は、値下がりより先に成約件数の減少や在庫の増加として表れる場合があります。地域や物件による違いも確認が必要です。
  • 家の買い時は、物件価格、借入金利、毎月の住居費、将来の収入・支出を合わせて判断しましょう。

1-1.株式・J-REIT・土地では価格が動く仕組みが違う

野村證券の2026年5月15日付記事では、前日の5月14日に不動産セクターが前日比5.3%下落した一方、東証REIT指数はほぼ横ばいだったと説明しています。同社は、不動産株の急落について、大手不動産会社の決算前後の持ち高調整による過剰反応の可能性を指摘しました。これは当時の市場に対する見解です。NOMURA ウェルスタイル – 野村の投資&マネーライフ

不動産に関するニュースを読むときは、何の価格が動いたのかを確認しましょう。

対象価格を見るときのポイント
不動産会社の株式会社の業績見通し、資金調達コスト、投資家の売買などが反映される
J-REIT不動産の賃貸収益に加え、借入負担や投資口市場の需給なども評価に影響する
土地・住宅個別の立地や建物の状態、買い手の予算、売り手との交渉などで取引価格が決まる

株式やJ-REITは市場で日々売買されます。一方、土地や住宅は売却活動から契約まで時間がかかるため、金融市場の変化と実際の取引価格の変化には時間差が生じ得ます。第一ライフ資産運用経済研究所

したがって、不動産株が下がったニュースだけで、検討中の土地や注文住宅も同じ割合で安くなるとは判断できません。

1-2.2026年の地価公示では、住宅地も上昇している

国土交通省の2026年地価公示では、全国平均の対前年変動率は次のとおりです。

用途全国平均の対前年変動率
全用途+2.8%
住宅地+2.1%
商業地+4.3%

全用途平均の2.8%には商業地なども含まれるため、住宅用地の動向を考える際には住宅地の数字も確認する必要があります。mlit.go.jp

また、地価公示は2026年1月1日時点の標準地の価格です。2026年10月時点の売買価格や、すべての土地の値動きを示すものではありません。購入候補地については、近隣の成約事例や売り出し状況を別途確認しましょう。mlit.go.jp

2-1.建築費が高いと、新築住宅を安く供給しにくい

金利が上がると、同じ返済額で借りられる金額が減り、住宅需要を抑える方向に働きます。

一方、住宅をつくる側には、土地取得費、資材費、人件費などの負担があります。第一ライフ資産運用経済研究所は、建築費や土地取得費の上昇が、新築住宅や開発物件の価格を下支えしていると分析しています。第一ライフ資産運用経済研究所

注文住宅の予算を考える際も、土地と建物を分けて確認することが大切です。土地を安く買えても、建物や外構の見積額が上がれば、必要な総予算は下がらない場合があります。

ただし、建築費が高いことは値下がりを防ぐ保証にはなりません。需要が弱まり、売り手が販売や資金回収を優先すれば、値下げが起こる可能性はあります。

2-2.事業者が供給戸数や販売時期を調整することがある

新築マンションでは、事業者が採算を確保するために、販売戸数を減らす、販売時期を遅らせる、住戸面積を小さくするといった対応を取ることがあります。

その場合、買い手の負担感が強くなっても、平均販売価格にはすぐに変化が表れない可能性があります。第一ライフ資産運用経済研究所も、価格と併せて供給戸数などを確認する必要性を指摘しています。第一ライフ資産運用経済研究所

この分析を住宅比較に生かすなら、販売価格に加えて、面積や仕様も確認しましょう。「価格は同じでも、以前より狭い」「標準仕様に含まれる設備が違う」といった条件の変化を見落とさずに済みます。

2-3.地域の需要や賃料が価格を支えることもある

不動産価格は、全国で同じように動くわけではありません。

国土交通省は2026年地価公示で、東京圏・大阪圏の中心部などの住宅需要や、子育て環境が整い転入者が多い地域の需要が地価を支えていると説明しています。また、主要都市の商業地では、オフィスの空室率低下や賃料上昇による収益性の改善も挙げています。mlit.go.jp

野村證券も、名目経済成長率が名目長期金利を上回る「G>R」の環境が続く場合、経済全体への悪影響は大きくなりにくいとの見方を示しています。NOMURA ウェルスタイル – 野村の投資&マネーライフ

ただし、経済全体の成長と、自分の世帯収入の増加は別々に確認する必要があります。家計の試算では、将来の昇給を見込まない場合でも返済を続けられるか検討しましょう。

3-1.成約件数・在庫件数・成約単価をセットで見る

第一ライフ資産運用経済研究所の2026年9月18日付レポートでは、首都圏中古マンションの2026年7月の動向を次のように紹介しています。

指標前年同月比読み取る際のポイント
成約件数8.6%減少売買が成立した件数が減っている
在庫件数5.5%増加市場に残る売り物件が増えている
成約㎡単価1.5%下落その月に成約した物件の平均単価が下がっている

これは同レポートが示す首都圏の中古マンションの7月データです。全国の戸建てや注文住宅に、そのまま当てはめることはできません。第一ライフ資産運用経済研究所

金利上昇で買い手の予算が小さくなっても、売り手がすぐに値下げするとは限りません。希望価格の差が広がると、まず取引が成立しにくくなり、売却中の物件が増えるという経路が考えられます。

なお、成約㎡単価は、売れた物件の立地や築年数の構成にも左右されます。同レポートは、2025年1月以降の成約件数について、登録適正化のためのシステム改修の影響にも言及しています。単月の数字だけで値下がりを断定せず、同じ地域・条件で数か月の推移を確認しましょう。第一ライフ資産運用経済研究所

3-2.J-REITの割安さを、そのまま住宅の値下がり予測に使わない

同レポートによると、2026年8月末のJ-REITの平均NAV倍率は0.82倍でした。

NAVは、保有不動産の時価評価などを反映した純資産価値です。0.82倍は、投資口価格が1口当たりNAVを平均的に18%下回る水準にあることを示します。第一ライフ資産運用経済研究所

ここから「今後、住宅価格も18%下がる」とは計算できません。J-REITの価格には借入負担や投資家の売買なども影響し、保有している不動産の用途や地域も一般の住宅とは異なるためです。

住宅購入では、金融市場の指標を参考にしつつ、候補地周辺の取引状況を確認することが役立ちます。

3-3.バブル崩壊と同じ値下がりを前提にしてよい?

第一ライフ資産運用経済研究所は、金融機関の規制やリスク管理、資金調達手段の変化を踏まえ、バブル期と同じ形の全面的な暴落を基本シナリオとする必要はないとしています。一方で、借り換え条件の悪化などによる段階的な調整には注意が必要との見方です。第一ライフ資産運用経済研究所

これは将来の下落を否定するものではありません。住宅を購入する側としては、相場が下がった場合でも住み続けられる返済計画になっているか、転勤などで早期売却する可能性があるかまで考えておきましょう。

4-1.5,000万円を35年で借りる場合の比較

金利の違いが家計に与える影響を、具体的に確認してみましょう。

以下は、借入額5,000万円、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしの試算です。各金利が借入当初から完済まで一定と仮定し、融資手数料、保証料、団体信用生命保険の金利上乗せなどは含めていません。金利は比較用の仮定であり、現在の特定商品の適用金利ではありません。

年利毎月の返済額年1.0%との差額
1.0%約141,143円基準
1.5%約153,092円月約11,949円増
2.0%約165,631円月約24,489円増
3.0%約192,425円月約51,282円増

年1.0%と年2.0%を比べると、毎月約2.45万円、年間約29.4万円の差になります。差額は丸める前の計算結果から算出しています。

すでに返済中の変動金利ローンで途中から金利が上がる場合は、その時点の残高、残りの返済期間、契約上の返済額見直し方法によって結果が異なります。

4-2.物件が10%安くなっても、月々の負担が増える場合がある

価格と金利を組み合わせた、次の2つの仮定を比較します。いずれも購入価格の全額を借り入れ、35年の元利均等返済、ボーナス返済なし、金利は全期間一定とします。諸費用は含めません。

比較条件ケースAケースB
購入価格・借入額5,000万円4,500万円
年利1.0%2.0%
毎月の返済額約141,143円約149,068円

ケースBは価格・借入額が10%低いにもかかわらず、毎月の返済額は約7,925円高くなります。

この試算から分かるのは、値下がり幅と金利の変化を一緒に計算する必要があるということです。実際に待つかどうかを判断する際は、待っている間の家賃、増やせる自己資金、収入の変化も含めて比較しましょう。

4-3.長期金利と住宅ローンの適用金利を区別する

ニュースに出てくる「10年国債利回り」と、自分が借りる住宅ローンの金利は同じものではありません。

住宅金融支援機構は、変動金利型は日銀の政策金利の影響を受け、全期間固定金利型は10年国債利回りの影響を受けると説明しています。また、固定金利は将来の見通しを反映し、変動金利に先行して上がる傾向があります。flat35.com

住宅ローンを比較するときは、金融機関が提示する自分の適用金利と、その金利が確定する時期を確認してください。

全期間固定金利型は返済終了までの金利が確定します。一方、変動金利型や固定金利期間選択型では、将来の金利見直しによって負担が変わる可能性があります。金利タイプは、家計がどの程度の負担増に対応できるかを踏まえて選びましょう。flat35.com

5-1.毎月の返済額に、住宅を維持する費用を加える

住宅購入後には、ローン返済以外にも費用がかかります。

  • 固定資産税・都市計画税などの税金
  • 火災保険・地震保険などの保険料
  • 建物や設備の修理・交換に備える積立て
  • マンションの場合は管理費・修繕積立金など

借入可能額は、金融機関の審査によって決まる金額です。一方、無理なく返せる額を考えるには、生活費や教育費、老後に向けた貯蓄まで含めた家計の確認が必要です。

共働きの世帯は、育児休業や時短勤務によって収入が減る時期も試算しておきましょう。住宅ローン金利の上昇と収入減が重なるケースまで確認すると、予算の余裕が分かります。

5-2.土地・建物・付帯工事を合わせた総額で比較する

注文住宅では、土地価格や建物本体価格だけを見て予算を決めると、後から必要になる費用を見落とすおそれがあります。

確認する費用見積りで確認すること
土地取得費土地代と仲介手数料、登記費用などの取得費用
建物工事費延床面積、住宅性能、標準仕様、追加工事の範囲
敷地に応じた工事費地盤改良、解体、造成、給排水の引き込みなどの必要性
外構・入居準備費外構、照明、空調、カーテン、引っ越しなどの計上範囲
資金調達に関する費用融資手数料、必要に応じたつなぎ融資などの費用

同じ予算でも、土地条件や住宅会社の見積範囲によって建てられる内容は変わります。複数社を比較する際は、面積、性能、設備、工事範囲、税込・税別をそろえましょう。

見積りの有効期限や、契約後に価格が変更される条件も確認しておくと、購入時期を検討しやすくなります。

5-3.相場予測と、自分たちの購入条件を照らし合わせる

購入を進めるか、時間をかけて検討するかは、次のように整理できます。

自分たちの状況判断に向けて確認すること
希望に合う土地があり、金利が上がっても家計に余裕がある周辺の成約事例と建築総額を確認し、具体的な比較を進める
現在の金利でも返済がぎりぎり借入額、土地の条件、建物面積などを見直す
転勤・出産・育児休業などで生活が変わる可能性が高い住む場所と収入・支出の見通しを整理する
値下がりを期待して購入を待ちたい価格が下がる場合・横ばいの場合と、複数の金利条件で試算する

「金利が上がるから急ぐ」「いつか安くなるから待つ」という情報だけでは、判断材料が不足します。

希望する暮らしを実現できるか、総予算が収まるか、将来も返済を続けられるか。 この3点を確認することが、購入時期を決める土台になります。

金利上昇は住宅需要や不動産投資の採算に影響しますが、建築費、供給量、地域の需要などによって、価格への表れ方は変わります。不動産株の下落、地価公示、中古住宅の成約価格についても、それぞれの対象と時点を確認する必要があります。

住宅購入を検討する際は、候補エリアの成約状況と在庫、土地・建物を合わせた総額、複数の金利条件での返済額を確認しましょう。

家づくりの予算に迷ったら、生活費や将来の教育費などを確保したうえで、住居費に使える金額から整理することが第一歩です。

出典・参考資料