トチカツ!Myhome Heroes無料相談を予約
サービス内容選択肢の比較相談の流れお役立ち記事運営者情報住宅相談サイトへ →無料相談を予約するその他のお問い合わせLINEで質問する
相続・土地活用

遺産5.4億円でも、預金が少なければ相続税の納税資金が不足することがあります。相続税約2.1億円の計算例をもとに、株価下落の影響、小規模宅地等の特例、実家と株式の売却、延納・物納を解説。親子で確認したい資産の内訳と、生前の備えを整理します。

更新 2026.10.05読了目安 19分監修:潟沼勇気

遺産が多くても、納税期限までに使える現金が少なければ、相続税の支払いに困ることがあります。 株式や不動産を多く保有する家庭では、相続する財産の総額と、納税資金の準備を一緒に考える必要があります。

2026年10月5日配信のTHE GOLD ONLINEでは、株式や自宅など計5億4,000万円の遺産を受け継いだ息子が、納税資金の不足に直面する事例が紹介されました。ライブドアニュース

この記事では、報道の資産構成をもとに相続税を試算し、株価が下がった場合の影響、実家の売却・賃貸の考え方、生前に準備しておきたいことを整理します。

  • 今回の条件を相続税評価額として試算すると、相続税は約2億1,000万円。遺産の預金1,000万円だけでは、約2億円が不足します。
  • 相続後の株価下落で、相続税が同じ割合だけ下がるわけではありません。現金化を先送りすると、より多くの株式を売る必要が生じることがあります。
  • 実家の売却は納税資金を確保する選択肢です。売却価格、税金・費用、入金時期を確認し、株式の売却と比較します。
  • 小規模宅地等の特例、延納・物納には要件があります。税額の試算と資金準備を早い段階で税理士に相談することが大切です。

1-1.財産の約98%が株式と不動産だった

報道で紹介された遺産の内訳は、次のとおりです。母親はすでに亡くなっており、法定相続人は息子1人という設定です。

財産の種類金額納税資金として使う際の確認事項
株式4億5,000万円相続手続き、売却価格、売却益への課税
自宅の土地・建物8,000万円売却の可否、税金・諸費用、代金の受取時期
預金1,000万円金融機関の相続手続き、払戻しの時期
合計5億4,000万円資産額と、期限までに用意できる現金を確認

株式と不動産は合計5億3,000万円で、遺産の約98%を占めます。財産は十分にあっても、そのまま納税に使える預金は限られています。

1-2.相続税は概算で2億1,000万円

ここでは、上記の金額を相続税評価額として扱います。小規模宅地等の特例は適用せず、債務・葬式費用の控除、生前贈与の加算、各種税額控除などがないものとして試算します。

相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。相続人が子1人の場合は、3,600万円となります。nta.go.jp

計算項目計算内容金額
遺産総額株式+土地・建物+預金5億4,000万円
基礎控除3,000万円+600万円×1人3,600万円
課税遺産総額5億4,000万円-3,600万円5億400万円
相続税の概算5億400万円×50%-4,200万円2億1,000万円
遺産の預金で払った場合の不足額2億1,000万円-1,000万円2億円

税率50%と控除額4,200万円は、法定相続分に応ずる取得金額が3億円超・6億円以下の場合の速算表に基づきます。今回は相続人が1人なので、課税遺産総額をそのまま当てはめています。nta.go.jp

息子自身の貯金1,000万円も全額使うと仮定しても、不足額は1億9,000万円です。さらに、自己資金には生活費や教育費などの使途があるため、全額を納税に回せるかは別途判断が必要です。

1-3.申告・納税は原則10か月以内

相続税の申告・納税期限は、原則として、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。納付は金銭による一括払いが原則となります。nta.go.jp

この期間には、財産調査や評価、金融機関での相続手続き、不動産を売る場合の買主探しなども含まれます。納税額の確定を待ち続けるより、早めに概算を出し、必要な資金と準備期間を把握しておくことが重要です。

2-1.上場株式の評価には4つの価格を使う

上場株式の相続税評価では、原則として次の価格を比較し、最も低いものを採用します。

  1. 亡くなった日の終値
  2. 亡くなった月の終値の月平均額
  3. その前月の終値の月平均額
  4. その前々月の終値の月平均額

死亡日に取引がない場合や権利落ちがある場合などは、別途調整が必要です。nta.go.jp

そのため、死亡日の株価だけで必ず評価するわけではありません。一方、数か月後の株価が急落したからといって、その売却時の価格で相続税を計算し直せるわけでもありません。

2-2.必要な現金が同じでも、売却する割合が増える

次の表は、相続税評価額が確定した後の値下がりを考えるための仮定です。株式の時価を当初4億5,000万円とし、遺産の預金を使った後の不足額2億円を、株式の売却だけで用意するとします。

株式の値下がり率売却時の株式全体の時価2億円を得るために売却する割合
値下がりなし4億5,000万円約44.4%
30%下落3億1,500万円約63.5%
50%下落2億2,500万円約88.9%

これは報道事例の実際の下落率ではなく、説明用の試算です。売却時の税金・手数料、配当収入、息子の自己資金は考慮していません。

納税のために必要な金額が変わらなければ、値下がりするほど多くの保有株式を手放すことになります。 売却後に残る株式が減れば、将来受け取る配当にも影響します。

納税資金に充てる部分をどの時期に確保するか、納期限から逆算して決めておくことが大切です。

2-3.相続時より安く売っても、売却益に税金がかかる場合がある

課税口座で保有していた株式を相続した場合、取得費は原則として亡くなった人の取得費を引き継ぎます。相続時の評価額まで取得費が引き上がるわけではありません。なお、NISA口座の株式には別の取扱いがあります。nta.go.jp

たとえば、親が昔に安く購入した株式なら、相続時より値下がりしてから売っても、取得費を上回る利益が出ている可能性があります。

納税資金の計画では、売却代金から売却に伴う税金と手数料を差し引いて、実際に使える金額を見積もりましょう。

3-1.一定の居住用宅地は330㎡まで80%減額

小規模宅地等の特例では、要件を満たす特定居住用宅地等について、330㎡までの部分の相続税評価額を80%減額できます。対象は土地等であり、土地・建物の合計額や相続税そのものを80%減らす制度ではありません。nta.go.jp

今回の「自宅8,000万円」には土地と建物が含まれています。特例を検討するには、それぞれの評価額や土地の面積を確認する必要があります。

3-2.取得する人の同居状況や居住歴で判定する

適用要件は、配偶者、同居親族、それ以外の親族などで異なります。同居親族には、原則として申告期限までの居住・保有継続要件があります。別居親族については、被相続人の配偶者や同居相続人の有無、過去の居住先の所有者などを確認します。nta.go.jp

今回のように、息子が親と別居し、自分名義の持ち家に住んでいる場合は、通常、別居親族向けの居住要件を満たしません。

実家を取得すれば自動的に特例を使えると考えず、売却や転居を決める前に適用可否を確認しましょう。特例を使う場合は、申告手続きも必要です。

4-1.売却・賃貸を「用意できる現金」と「時期」で比較する

納税資金が不足する場合は、財産ごとに現金化の方法を比較します。

選択肢納税資金への効果判断前に確認すること
上場株式の一部を売却する売却した分を現金化できる相続手続き、銘柄ごとの取得費、税引後の手取り
実家を売却するまとまった資金を用意できる可能性がある売却価格、諸費用、税金、代金の受取時期
実家を賃貸する継続的な家賃収入を得られる可能性がある改修費、空室、管理費、納期限までの収入
株式と実家を組み合わせて売却する複数の財産から必要額を確保できる残したい財産と、各売却の手取り・時期

今回のように約2億円が不足する場合、実家を貸して得る家賃だけで、短期間に不足額を埋めるのは現実的ではありません。賃貸を選ぶなら、当面の納税資金を別に確保できるかを先に確認します。

4-2.実家の評価額8,000万円から、売却価格は断定できない

土地の相続税評価には路線価方式や倍率方式があり、一般的な家屋は固定資産税評価額をもとに評価します。nta.go.jp

これらは税額を計算するための評価です。実際の売却価格は、立地、接道、建物の状態、買主の需要などによって変わります。

また、今回の8,000万円は土地・建物の合計額なので、全額を土地の路線価による評価額とみなすこともできません。

不動産会社には、査定額と併せて次の内容を確認しましょう。

  • 売却活動から代金を受け取るまでの見込み期間
  • 仲介手数料や測量費などの諸費用
  • 解体・修繕が必要か、その費用はいくらか
  • 税理士が試算する譲渡所得への税金を差し引いた手取り額

実家を残す予定がある場合は、誰が住むのか、維持費を誰が負担するのかまで話し合っておくと、売却との比較がしやすくなります。

4-3.売却時には「取得費加算の特例」も確認する

相続税が課税された人が、相続した土地・建物・株式などを一定期間内に売却すると、相続税のうち一定額を取得費に加算できる場合があります。売却益の計算に反映する特例で、適用には確定申告が必要です。

対象となる売却期間は、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。通常は相続開始から約3年10か月が目安になります。nta.go.jp

使える金額や他の特例との関係を確認したうえで、売却後に残る資金を試算しましょう。

4-4.延納・物納には申請と審査がある

現金での納税が難しい場合には、延納・物納という制度があります。

制度概要主な要件・負担
延納相続税を年払いで納める税額が10万円超、金銭納付が困難、原則として担保が必要、利子税がかかる
物納一定の相続財産で納める延納でも金銭納付が困難であること、財産の種類・状態などの条件を満たすこと

いずれも、納付が困難な金額が対象となり、原則として納期限までに申請が必要です。「株を売りたくない」「実家を残したい」という希望だけで利用が認められる制度ではありません。nta.go.jp

利用を検討する場合は、売却の検討と並行して、税理士や所轄税務署へ早めに相談しましょう。

5-1.財産一覧と、納税資金の見込みを作る

最初に行いたいのは、預金・株式・不動産・借入金・保険契約の一覧化です。株式は保有銘柄だけでなく取得費、不動産は名義や利用状況も整理します。

そのうえで、次の順序で準備します。

  1. 法定相続人と財産の範囲を確認する
  2. 税理士に相続税の概算を依頼する
  3. 預金などで用意できる納税資金を計算する
  4. 不足額を、どの財産から、いつまでに確保するか決める
  5. 資産価格や家族構成が変わったら見直す

配当や家賃の年間収入と、相続時に必要なまとまった現金は、それぞれ計算しておくことが大切です。

5-2.生命保険は非課税枠と受取条件を確認する

亡くなった人が保険料を負担していた死亡保険金を相続人が受け取る場合、一定の要件のもとで、500万円×法定相続人の数の非課税限度額があります。法定相続人が1人なら500万円です。nta.go.jp

生命保険を納税資金に活用するなら、必要な保障額、保険料負担、受取人、支払条件を確認します。非課税枠の大きさだけで加入を決めず、家族に必要な現金を用意できる設計かを考えましょう。

5-3.生前贈与は相続税への加算も含めて検討する

暦年課税の贈与では、贈与税がかからなかった財産でも、一定の条件で相続税の計算に加算されます。

2026年中に相続が開始する場合の加算対象期間は、原則として相続開始前3年以内です。その後は経過措置を経て、2031年以降の相続では原則7年以内となります。相続や遺贈で財産を取得する人かどうかなども判定に関わります。nta.go.jp

贈与の金額や時期だけでなく、親自身の生活費・介護費を確保できるかも含めて、長期的に検討しましょう。

5-4.土地活用は、手元に残る現金も確認する

賃貸住宅の建築や不動産の購入を考える場合は、税額の見込みに加え、建築費、借入返済、修繕費、空室時の収支を確認します。多額の現金を使えば、納税資金の余裕が小さくなることもあります。

また、小規模宅地等の特例には相続開始直前の利用状況などの要件があるため、相続後に実家を賃貸化するだけで、その相続に貸付事業用の特例を適用できるわけではありません。nta.go.jp

土地活用を比較するときは、「相続税がいくらになるか」と「納税後も無理なく保有できるか」を併せて確認しましょう。

  • ☐ 預金・株式・不動産・借入金を一覧にしている
  • ☐ 相続税の概算を税理士に確認している
  • ☐ 納税に使える現金と、不足額を把握している
  • ☐ 株式の取得費や取引資料を確認できる
  • ☐ 実家の名義、土地・建物の評価額、利用状況が分かる
  • ☐ 小規模宅地等の特例の適用可否を確認している
  • ☐ 実家を住居・賃貸・売却のどれにするか話し合っている
  • ☐ 売却にかかる期間と、税金・費用を引いた手取りを確認している
  • ☐ 親の生活費・介護費と、子の生活資金を確保している

すべてを一度に決める必要はありません。まず財産の内訳と、実家を将来どうしたいかを共有し、その情報をもとに税額と資金計画を具体化していきましょう。

遺産5億4,000万円という金額だけでは、納税資金が足りるかは判断できません。今回の条件では相続税は約2億1,000万円となり、遺産の預金だけでは約2億円が不足します。

株式は売却時の値動きや譲渡益への課税、不動産は売却までの期間や諸費用が、使える現金の額に影響します。特例の適用可否と税額は税理士に確認し、実家の扱いは家族の希望と手取り額を踏まえて考えることが大切です。

まずは財産一覧を作り、「いくら納める見込みか」「いつまでに、どの財産から現金を用意するか」を親子で確認しましょう。

出典・参考資料