4-1.売却・賃貸を「用意できる現金」と「時期」で比較する
納税資金が不足する場合は、財産ごとに現金化の方法を比較します。
| 選択肢 | 納税資金への効果 | 判断前に確認すること |
|---|
| 上場株式の一部を売却する | 売却した分を現金化できる | 相続手続き、銘柄ごとの取得費、税引後の手取り |
| 実家を売却する | まとまった資金を用意できる可能性がある | 売却価格、諸費用、税金、代金の受取時期 |
| 実家を賃貸する | 継続的な家賃収入を得られる可能性がある | 改修費、空室、管理費、納期限までの収入 |
| 株式と実家を組み合わせて売却する | 複数の財産から必要額を確保できる | 残したい財産と、各売却の手取り・時期 |
今回のように約2億円が不足する場合、実家を貸して得る家賃だけで、短期間に不足額を埋めるのは現実的ではありません。賃貸を選ぶなら、当面の納税資金を別に確保できるかを先に確認します。
4-2.実家の評価額8,000万円から、売却価格は断定できない
土地の相続税評価には路線価方式や倍率方式があり、一般的な家屋は固定資産税評価額をもとに評価します。nta.go.jp
これらは税額を計算するための評価です。実際の売却価格は、立地、接道、建物の状態、買主の需要などによって変わります。
また、今回の8,000万円は土地・建物の合計額なので、全額を土地の路線価による評価額とみなすこともできません。
不動産会社には、査定額と併せて次の内容を確認しましょう。
- 売却活動から代金を受け取るまでの見込み期間
- 仲介手数料や測量費などの諸費用
- 解体・修繕が必要か、その費用はいくらか
- 税理士が試算する譲渡所得への税金を差し引いた手取り額
実家を残す予定がある場合は、誰が住むのか、維持費を誰が負担するのかまで話し合っておくと、売却との比較がしやすくなります。
4-3.売却時には「取得費加算の特例」も確認する
相続税が課税された人が、相続した土地・建物・株式などを一定期間内に売却すると、相続税のうち一定額を取得費に加算できる場合があります。売却益の計算に反映する特例で、適用には確定申告が必要です。
対象となる売却期間は、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。通常は相続開始から約3年10か月が目安になります。nta.go.jp
使える金額や他の特例との関係を確認したうえで、売却後に残る資金を試算しましょう。
4-4.延納・物納には申請と審査がある
現金での納税が難しい場合には、延納・物納という制度があります。
| 制度 | 概要 | 主な要件・負担 |
|---|
| 延納 | 相続税を年払いで納める | 税額が10万円超、金銭納付が困難、原則として担保が必要、利子税がかかる |
| 物納 | 一定の相続財産で納める | 延納でも金銭納付が困難であること、財産の種類・状態などの条件を満たすこと |
いずれも、納付が困難な金額が対象となり、原則として納期限までに申請が必要です。「株を売りたくない」「実家を残したい」という希望だけで利用が認められる制度ではありません。nta.go.jp
利用を検討する場合は、売却の検討と並行して、税理士や所轄税務署へ早めに相談しましょう。