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相続・空き家

相続した実家を売る・貸す・解体する・残す場合のメリットと注意点を比較。固定資産税、維持費、家賃収入、売却時の税金を踏まえ、後悔しない判断手順を解説します。

更新 2026.07.26読了目安 21分監修:潟沼勇気

親から実家を相続したものの、自分で住む予定がなく、「売るべきか」「貸したほうが得なのか」「古いので解体すべきか」と迷っていないでしょうか。

相続した実家の判断では、思い出や将来への期待だけでなく、売却手取り、賃貸後の手残り、維持費、固定資産税、建物の状態を同じ条件で比較することが重要です。

この記事では、相続した実家を売る・貸す・解体する・残す場合のメリットと注意点を整理し、自分に合った選択肢を判断する手順を解説します。

相続した実家に今後住む人が決まっていない場合は、何となく残すのではなく、売却査定、家賃査定、修繕・解体見積りを同時に取得して比較しましょう。

  • 今後3年程度のうちに自分や家族が住む予定があるなら、適切に管理しながら残す
  • 賃貸需要があり、修繕費や空室損失を差し引いても手残りが出るなら貸す
  • 住む予定も賃貸事業としての収益性もないなら、売却を優先して検討する
  • 倒壊のおそれがある建物や、土地として活用したほうが価値を出せる物件は解体を検討する
  • 解体は単独のゴールではなく、売却、建替え、駐車場など次の活用方法とセットで判断する
  • 結論が出ない場合でも、相続登記と空き家の管理は先送りしない

特に注意したいのは、貸した後では利用できなくなる可能性がある売却時の税制特例があることです。「ひとまず貸して、後から考える」という選択が、必ずしも得になるとは限りません。

相続した実家の主な選択肢は、売る、貸す、解体する、残すの4つです。

比較項目売る貸す解体する残す
主な目的現金化して管理を終える家賃収入を得る危険解消や土地活用の準備将来の居住や活用に備える
初期費用仲介手数料、測量、残置物処分など修繕、設備交換、募集費用など解体、廃棄物処理、整地など修繕、片付け、防犯対策など
継続収入なし家賃収入が見込める活用方法による原則なし
継続的な管理売却後は不要賃貸管理と修繕対応が必要土地の管理が必要建物と土地の管理が必要
空室リスクなしありなし空き家のままならあり
税金の注意点譲渡所得税と特例を確認家賃収入に所得税等がかかる住宅用地特例が外れる可能性管理状態によって特例解除の可能性
将来の自由度売却後は戻せない入居中は自由に使いにくい建物は元に戻せない選択肢を残しやすい
向いている人利用予定がなく管理を終えたい人賃貸需要と収益性を確認できる人建物が危険、または土地活用したい人近い将来に利用予定がある人

最も避けたいのは、判断をしないまま空き家として放置することです。

総務省の2023年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%となり、いずれも過去最高でした。空き家は時間が経つほど建物が劣化しやすく、売却や賃貸に必要な費用が増える可能性があります。

売却は、実家を現金化し、固定資産税や管理の負担を終わらせられる方法です。

2-1.売却が向いているケース

次の条件に当てはまる場合は、売却を優先して検討する価値があります。

  • 自分や家族が住む予定がない
  • 実家が現在の居住地から遠く、管理に通えない
  • 賃貸需要が弱い
  • 修繕費をかけても十分な家賃を得られない
  • 兄弟姉妹との共有状態を解消したい
  • 固定資産税や保険料を払い続けたくない
  • 相続した土地を公平に分けたい

複数の相続人がいる場合、不動産のまま共有すると、売却や大規模修繕などの重要な判断で意見が分かれることがあります。売却して現金化すれば、相続人間で分けやすくなる点もメリットです。

2-2.売却価格ではなく手取り額で比較する

売却の判断では、不動産会社が提示する査定価格だけでなく、最終的に残る金額を確認します。

売却手取りの概算

売却価格-仲介手数料-測量費-残置物処分費-解体費-登記費用-譲渡所得税等=売却手取り

売却方法によって、必要な費用や売りやすさも変わります。

売却方法特徴注意点
古家付き土地として売る解体費を先に負担せず売却できる建物の状態によって価格交渉を受けやすい
解体して更地で売る買主が土地を確認しやすい解体費の先行負担と固定資産税に注意
中古戸建てとして売る建物にも価値が付く可能性があるインスペクションや修繕が必要になる場合がある
不動産会社に買い取ってもらう早く現金化しやすい仲介による売却より価格が低くなる傾向がある

最初から解体するのではなく、古家付きの査定額、更地にした場合の査定額、解体費を並べて判断することが大切です。

2-3.相続空き家の3,000万円特別控除を確認する

一定の要件を満たす相続空き家を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる可能性があります。

主な要件は次のとおりです。

  • 1981年5月31日以前に建築された家屋である
  • 区分所有建物ではない
  • 相続開始直前に原則として被相続人以外が住んでいなかった
  • 相続後、売却まで事業、賃貸、居住に使用していない
  • 売却代金が1億円以下である
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する
  • 2027年12月31日までに売却する
  • 耐震基準を満たすか、一定の期限までに耐震改修または取り壊しを行う

家屋と敷地を取得した相続人が3人以上の場合、控除上限は2,000万円です。

要件を満たすかどうかで税負担が大きく変わるため、貸す、解体する、売る順番を決める前に税理士や税務署へ確認しましょう。

2-4.取得費が分かる書類を探す

相続した不動産の取得費は、原則として親などの被相続人が購入したときの金額を引き継ぎます。

取得費が分からない場合、売却価格の5%を概算取得費として計算できます。ただし、実際の購入額より大幅に低い取得費で計算され、譲渡所得が大きくなる可能性があります。

次の書類を探しておきましょう。

  • 購入時の売買契約書
  • 建築工事請負契約書
  • 仲介手数料の領収書
  • 土地購入時の精算書
  • 増改築や設備工事の契約書
  • 住宅ローンに関する書類
  • 購入当時の通帳や振込記録

相続税を納めた人が一定期間内に不動産を売却した場合、相続税額の一部を取得費に加算できる特例もあります。

実家を貸せば、所有権を残しながら家賃収入を得られます。ただし、家賃の全額が利益になるわけではありません。

3-1.賃貸が向いているケース

  • 駅、学校、商業施設などに近く賃貸需要がある
  • 戸建て賃貸の供給が少ない地域にある
  • 大規模な修繕をしなくても貸せる
  • 修繕費を回収できる家賃を設定できる
  • 将来、自分や子どもが利用する可能性がある
  • 入居者対応や建物管理を委託できる
  • 空室や突発修繕に備える資金がある

戸建ては、子育て世帯、ペットを飼いたい世帯、駐車場を必要とする世帯から需要を得られる場合があります。一方で、地域によっては入居者が決まらず、募集期間が長期化することもあります。

3-2.表面利回りではなく年間手残りを計算する

貸すかどうかは、想定家賃だけで判断してはいけません。

年間手残りの概算

年間家賃収入-空室損失-管理委託料-固定資産税等-火災保険料-修繕費-設備交換費-庭の管理費-その他経費=税引前の年間手残り

例えば月10万円で貸せても、年間を通じて満室になるとは限りません。給湯器、エアコン、水回り、屋根、外壁などの修繕も所有者負担になることがあります。

賃貸開始前には、少なくとも次の数字を確認します。

確認項目確認する内容
想定家賃実際に成約が見込める家賃
入居率周辺の戸建て賃貸需要と募集期間
初期修繕費入居募集前に必要な工事
年間経費税金、保険、管理、清掃、修繕
大規模修繕屋根、外壁、水回りなどの更新時期
出口価格数年後に売却する場合の予想価格
税制への影響相続空き家の特別控除を利用できるか

3-3.貸すと自由に売却・利用できなくなる

入居者がいる状態でも売却はできますが、購入者が投資家に限られやすくなります。自分や家族が住みたくなっても、所有者の都合だけで直ちに退去してもらえるとは限りません。

将来使う時期が決まっている場合は、契約期間満了で終了する定期建物賃貸借契約も選択肢です。ただし、契約書面や事前説明、終了通知などの要件があるため、賃貸管理会社や専門家へ相談しましょう。

また、相続後に一度でも賃貸に使用すると、相続空き家の3,000万円特別控除を利用できなくなる可能性があります。売却と賃貸は、税引後の手残りまで比較してから決める必要があります。

解体は、老朽化した建物の危険をなくし、土地を売却・活用しやすくする方法です。ただし、解体しただけでは収入は生まれません。

4-1.解体が向いているケース

  • 倒壊や屋根材落下のおそれがある
  • 雨漏りやシロアリ被害が深刻である
  • 修繕費が建物の価値に見合わない
  • 中古住宅として売却することが難しい
  • 更地にしたほうが買主を見つけやすい
  • 戸建て賃貸やアパートへの建替えを計画している
  • 駐車場など別の土地活用を検討している

解体費は、構造、延床面積、接道状況、残置物、庭木、塀、地中埋設物、アスベストの有無などで大きく変わります。現地調査を受け、工事範囲をそろえて複数社から見積りを取得しましょう。

4-2.解体すると土地の固定資産税が上がる可能性がある

住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準を軽減する住宅用地特例があります。

土地の区分固定資産税の課税標準
住宅1戸につき200平方メートル以下の部分評価額の6分の1
200平方メートルを超える部分評価額の3分の1

建物を解体し、翌年1月1日時点で住宅用地に該当しなくなると、原則としてこの特例を受けられなくなります。

ただし、固定資産税の請求額が単純に6倍になるわけではありません。負担調整措置、都市計画税、建物分の税金がなくなることなども影響します。解体前に市区町村へ翌年度の税額見込みを確認しましょう。

4-3.解体前に古家付き売却も査定する

更地のほうが必ず高く売れるとは限りません。

買主が建物をリフォームして使いたい場合や、買主側で解体業者を選びたい場合は、古家付きのほうが売却しやすいこともあります。また、再建築不可の土地では、建物を解体すると新しい住宅を建てられない可能性があります。

解体前に確認したい項目は次のとおりです。

  • ☐ 古家付き土地の査定価格
  • ☐ 更地にした場合の査定価格
  • ☐ 解体費と付帯工事費
  • ☐ 解体後の固定資産税
  • ☐ 接道義務と再建築の可否
  • ☐ 境界確定や測量の必要性
  • ☐ 自治体の解体補助金
  • ☐ 相続空き家の特別控除の適用要件

実家を残せば、将来住む、貸す、売る、建て替えるという選択肢を維持できます。家族の思い出を残せることも大きなメリットです。

一方で、残すことと放置することは違います。

5-1.残すことが向いているケース

  • 数年以内に自分や家族が住む予定がある
  • 定期的に帰省し、別宅として利用する
  • 相続人の間で活用方針を検討している
  • 地域の開発や周辺環境の変化を待ちたい
  • 建物の状態が良く、維持費が過大ではない
  • 管理を担当する人と費用負担を決められる

「子どもが将来住むかもしれない」という理由だけで長期間残す場合は、利用する時期を決めましょう。判断期限がなければ、維持費を払いながら建物だけが劣化する可能性があります。

5-2.残す場合に必要な維持管理

空き家は、人が住んでいる住宅よりも湿気や設備不良に気づきにくく、劣化が進みやすい傾向があります。

  • 定期的な換気と通水
  • 雨漏り、外壁、屋根、基礎の点検
  • 庭木の剪定と除草
  • 郵便物の回収
  • 害虫や害獣の確認
  • 防犯対策
  • 台風や地震後の確認
  • 火災保険と空き家補償の確認
  • 近隣からの連絡を受ける体制づくり

遠方に住んでいる場合は、空き家管理サービスへの委託も検討します。管理費だけでなく、固定資産税、都市計画税、保険料、光熱費、交通費、修繕積立を含めた年間維持費を計算しましょう。

5-3.管理不全空家になると税負担が増える可能性がある

適切に管理されず、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある住宅は、「管理不全空家」に指定される可能性があります。

市区町村からの指導に従わず勧告を受けると、敷地に対する住宅用地特例が適用されなくなる場合があります。建物を残しているだけで、必ず固定資産税の軽減を受け続けられるわけではありません。

倒壊、外壁の剥落、害虫、悪臭、雑草、樹木の越境などで近隣に損害を与えれば、所有者として責任を問われる可能性もあります。

感情だけで決めるのではなく、次の順番で判断すると整理しやすくなります。

6-1.家族が利用する予定を確認する

まず、相続人と家族に次の内容を確認します。

  1. 誰かが住む予定はあるか
  2. いつから、何年間住むのか
  3. 修繕費と固定資産税を誰が負担するか
  4. 共有名義にする必要があるか
  5. 将来売却する場合に全員が合意できるか

利用者と時期が具体的に決まっていなければ、「いつか使う」は利用予定がない状態として収支を比較したほうが安全です。

6-2.建物と土地の状態を調べる

次に、実家が売れる、貸せる、建て替えられる状態か確認します。

  • 建物の築年数と構造
  • 雨漏り、傾き、シロアリ被害
  • 耐震性能
  • 土地と建物の登記内容
  • 境界標と測量図
  • 接道状況と再建築の可否
  • 用途地域、建ぺい率、容積率
  • 土砂災害、洪水などのハザード
  • 私道、越境、借地権などの権利関係
  • 残置物と家財の量

土地の価値が高くても、境界や接道に問題があれば、想定価格で売却できない場合があります。

6-3.3つの金額を同時に取得する

判断に必要なのは、売却価格だけではありません。

  • 売却査定と売却手取り
  • 家賃査定と賃貸後の年間手残り
  • 修繕費または解体費

可能であれば、古家付き売却、更地売却、不動産会社による買取の3パターンも比較しましょう。

6-4.保有期間を決めて比較する

1年間だけでなく、5年間や10年間の累計で比較します。

比較する金額計算の考え方
売る場合現在の売却手取り
貸す場合累計家賃手残り+将来の売却手取り-初期修繕費
解体する場合解体後の活用収益または売却手取り-解体費-保有費
残す場合将来の売却手取り-累計維持費-修繕費

将来の売却価格や入居率は確定していないため、楽観的なケースだけでなく、標準ケースと慎重ケースも計算することが重要です。

7-1.相続登記を行う

2024年4月1日から相続登記が義務化されています。

相続や遺贈により不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に登記申請が必要です。正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

2024年4月1日より前に発生した相続で未登記の場合も対象で、原則として2027年3月31日までの対応が必要です。

遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記を利用できることがあります。売却や賃貸を進めるためにも、まず登記状況を確認しましょう。

7-2.共有者全員で方針を決める

実家を兄弟姉妹などで共有している場合、共有物全体の売却には原則として共有者全員の合意が必要です。

次の内容を書面で整理しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。

  • 売る、貸す、残すなどの基本方針
  • 管理担当者
  • 税金や修繕費の負担割合
  • 家賃収入の分配方法
  • 売却する時期と最低条件
  • 相続人の一人が使用する場合の条件

7-3.家財を勝手に処分しない

実家の中にある預金通帳、貴金属、美術品、家具なども相続財産に該当する可能性があります。

相続人全員の確認前に処分すると、遺産分割のトラブルにつながるおそれがあります。重要書類や資産を仕分けし、写真や一覧表で記録してから処分を進めましょう。

8-1.何となく残して維持費だけを払い続ける

売却するか迷っている間にも、固定資産税、保険料、草木の管理費、修繕費は発生します。期限を決めずに残すのではなく、「1年後までに利用者が決まらなければ売却する」などの基準を設けましょう。

8-2.家賃だけを見て貸してしまう

修繕費、空室、管理費を考慮しないと、家賃収入があっても手残りがほとんど出ない場合があります。売却時の特例を失う可能性も含めて比較が必要です。

8-3.査定前に解体してしまう

古家付きのまま購入したい人がいる可能性や、再建築できない土地である可能性があります。解体は元に戻せないため、必ず事前調査と売却査定を行いましょう。

8-4.最も高い査定価格だけで不動産会社を選ぶ

査定価格は売却を保証する金額ではありません。販売根拠、類似成約事例、想定販売期間、値下げ方針、売却費用を確認し、最終手取りで比較しましょう。

8-5.相続人の一人だけで話を進める

売却、賃貸、大規模修繕、解体は、共有者間の合意が必要になる場合があります。費用負担と収益分配を含め、早い段階で話し合うことが重要です。

まずは次の順番で情報を集めましょう。

  1. 登記事項証明書と固定資産税納税通知書を確認する
  2. 相続人と利用予定を話し合う
  3. 購入時の契約書や建築資料を探す
  4. 建物の状態と再建築の可否を調査する
  5. 古家付きと更地の売却査定を取得する
  6. 家賃査定と必要な修繕費を確認する
  7. 解体費と解体後の固定資産税を確認する
  8. 売却・賃貸・保有の手残りを5年単位で比較する
  9. 税制特例の適用可否を税務署や税理士へ確認する
  10. 家族で判断期限を決める

最初から売却や土地活用を決める必要はありません。まず数字をそろえることで、実家を残すべきか、手放すべきかを客観的に判断できます。

相続した実家をどうするかは、建物への思い入れだけでなく、利用予定、賃貸需要、売却手取り、維持費、税金を踏まえて判断する必要があります。

  • 住む人が決まっておらず管理負担をなくしたい場合は売却
  • 賃貸需要があり、修繕費を含めても手残りが出る場合は賃貸
  • 建物が危険、または土地として活用したほうがよい場合は解体
  • 数年以内の利用予定と管理体制が明確なら残す
  • 解体や賃貸を始める前に、売却時の税制特例を確認する
  • 結論が出なくても相続登記と適切な管理は進める

最初の一歩は、売却査定、家賃査定、修繕・解体見積りを同時に取得し、同じ期間と条件で手残りを比較することです。

出典・参考資料