2-1.戸建てを借りたい人がいる立地か
最初に確認すべきなのは、建物よりも賃貸需要です。どれほどきれいに改修しても、借り手が少ない地域では、想定家賃の引き下げや長期空室が起こりやすくなります。
戸建て賃貸と相性がよい傾向があるのは、次のような立地です。
- 子育て世帯が生活しやすい
- 小中学校、スーパー、病院へアクセスしやすい
- 駐車場を1台以上確保できる
- 駅から離れていても、バスや車で移動しやすい
- 集合住宅では得にくい広さ、庭、収納、ペット相談などの特徴がある
反対に、人口減少が大きい地域、接道条件が悪く車が入りにくい土地、災害リスクが高い場所では、家賃だけでなく入居までの期間も慎重に見積もる必要があります。
近隣のアパート家賃だけを基準にせず、似た面積、間取り、築年数、駐車場条件の戸建て賃貸を比較しましょう。不動産会社2〜3社へ、想定家賃と入居までの見込み期間を確認すると判断しやすくなります。
2-2.所有者と権利関係が明確か
実家を貸す前に、登記事項証明書で土地と建物の名義を確認します。亡くなった親の名義のまま、遺産分割が終わっていない、複数人の共有になっている、土地と建物の所有者が異なるといった場合は、先に関係者との調整が必要です。
相続登記は2024年4月1日から義務化され、原則として不動産を相続したことを知った日から3年以内の申請が必要です。正当な理由なく申請義務を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。詳細は法務省の相続登記に関する案内で確認できます。
次に当てはまる場合は、募集前に司法書士や不動産会社へ相談しましょう。
- 相続登記が終わっていない
- 遺産分割協議がまとまっていない
- 共有者の一部が賃貸に反対している
- 借地上に建物があり、契約内容を確認できていない
- 抵当権や差押えなどの登記がある
- 建物が未登記、または登記内容と現況が大きく異なる
2-3.増築や用途に法令上の問題がないか
古い実家では、増築した部屋や物置が登記や建築確認関係書類へ反映されていないことがあります。建築確認済証、検査済証、設計図、増改築の記録が残っていれば用意し、現況と照合します。
書類がないだけで直ちに賃貸できないとは限りません。しかし、違反状態が疑われる建物や、安全性を確認できない増築部分があると、仲介会社が取り扱いに慎重になったり、改修方法が制限されたりする可能性があります。
また、一世帯へ一戸建てとして貸す場合と、シェアハウス、民泊、福祉施設などへ転用する場合では、建築基準法や消防法上の扱いが異なります。建築確認の手続きが不要な規模でも、関係法令への適合は必要です。特殊な使い方を考える場合は、自治体の建築指導窓口と消防署へ事前に確認してください。
2-4.耐震性と構造上の安全性を確保できるか
1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物は、一般に旧耐震基準の建物として扱われます。国土交通省も、1981年以前の建物には耐震性が不十分なものが多く、まず耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修や建て替えを検討するよう案内しています。
さらに、1981年6月から2000年5月までに建てられた木造住宅も、接合部や耐力壁の配置などを確認する価値があります。築年だけで安全・危険を断定せず、建築士などの専門家による調査で判断しましょう。
次の症状がある家は、入居募集より先に構造調査が必要です。
- 床を歩くと明らかな傾きを感じる
- 基礎に大きなひび割れや欠損がある
- 柱や土台に腐朽、シロアリ被害がある
- 屋根や外壁の一部が落下しそうになっている
- 建具が複数箇所で開閉しにくい
- 過去の地震、浸水、火災で大きな被害を受けた
2-5.雨漏り、腐朽、シロアリを止められるか
古い家で優先すべきなのは、壁紙やキッチンの見栄えよりも、雨水の侵入と構造材の劣化です。
国土交通省の既存住宅インスペクション・ガイドラインでは、主な確認対象として、構造耐力上の安全性に関わる劣化、雨漏り・水漏れ、給排水管の漏れや詰まりなどを挙げています。
天井の染みだけを補修しても、屋根や外壁からの侵入原因を直さなければ再発します。シロアリ被害も、表面だけで被害範囲を判断できない場合があります。必要に応じて建物状況調査や床下・小屋裏の追加調査を行いましょう。
2-6.生活設備と防火設備が正常に使えるか
入居者が安全かつ継続的に暮らすため、少なくとも次の設備を確認します。
- 給水、排水、給湯
- トイレ、浴室、キッチン
- 電気容量、分電盤、配線
- ガス設備またはIH設備
- 換気設備
- エアコン設置の可否
- 鍵、防犯、窓や雨戸
- 浄化槽を使用する場合の維持管理状況
住宅用火災警報器は、既存住宅を含むすべての住宅が設置義務の対象です。設置場所などは市町村条例で定められるため、管轄消防署の案内を確認してください。機器は古ければ作動試験を行い、交換目安も確認します。
設備が動くかだけでなく、古い給排水管や電気配線が入居後に故障する可能性も考慮します。国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、借主の責任で生じたものを除き、住宅の使用に必要な修繕を貸主が行う考え方が示されています。入居後の突発修繕に備えた予備費も必要です。
2-7.改修費を家賃収入で回収できるか
建物を直せることと、賃貸事業として成立することは別です。判断するときは、満室時の年間家賃ではなく、空室と経費を考慮した手残りを使います。
年間手残りの概算は、次の式で確認できます。
年間手残り = 月額家賃 × 12か月 × 想定稼働率 - 年間運営費
年間運営費には、管理委託料、入居募集費、固定資産税、火災・地震保険料、修繕費、庭木管理費などを含めます。ローンを利用する場合は返済額も別に差し引きます。
収支計算の例
以下は計算方法を示すための仮定であり、実際の査定額ではありません。
| 項目 | 仮定 |
|---|
| 月額家賃 | 12万円 |
| 想定稼働率 | 90% |
| 稼働率考慮後の年間家賃 | 129万6,000円 |
| 年間運営費 | 年間家賃の30%として約38万9,000円 |
| 年間手残り | 約90万7,000円 |
| 初期改修費 | 500万円 |
| 単純回収年数 | 約5.5年 |
単純回収年数は、初期改修費を年間手残りで割って求めます。ただし、この計算には所得税、ローン金利、大規模修繕、家賃下落、退去時の原状回復費を十分に反映していません。最低でも10年間の収支表を作り、空室や追加修繕が発生しても資金が残るか確認しましょう。