実家の土地を活用する大きなメリットは、新たな土地購入費を抑えられることで、大手ハウスメーカーを含めた住宅会社の選択肢を広げられる可能性があることです。
「大手ハウスメーカーは年収が高い家庭でなければ建てられない」と考えられがちですが、実際には年収だけではなく、土地購入費を含めた総予算の配分が大きく影響します。
土地から購入する場合は、住宅ローン予算のうち数千万円を土地へ使わなければなりません。実家の土地を利用できれば、その予算を建物、住宅性能、外構、将来の修繕費などへ振り分けられます。
3-1.土地購入資金は全国平均2,674万円、三大都市圏平均3,947万円
国土交通省の令和7年度住宅市場動向調査によると、土地を購入して注文住宅を建てた世帯の土地購入資金は次のとおりです。
| 地域 | 土地購入資金の平均 | 土地購入資金の中央値 |
|---|
| 全国 | 2,674万円 | 1,500万円 |
| 三大都市圏 | 3,947万円 | 2,500万円 |
実家の土地を使う場合、この金額がそのまま現金として手元に残るわけではありません。また、すべての土地で平均額と同じ効果が得られるわけでもありません。
それでも、新たな土地購入が不要になれば、全国平均では約2,700万円、三大都市圏では約3,900万円を土地へ支払わずに家づくりを始められる可能性があります。
これは住宅会社選びを大きく変える金額です。土地から購入する場合には予算不足で候補から外れていた大手ハウスメーカーでも、実家の土地を使えば検討できる可能性が高まります。
3-2.平均年収から手取りの25%以内で住宅ローンを逆算する
同調査における注文住宅取得世帯の平均世帯年収は、全国で1,129万円、三大都市圏で1,249万円です。
ここでは、次の条件で住宅ローン借入額を簡易計算します。
- 世帯の手取り年収は額面年収の75%と仮定
- 住宅ローン返済額は手取り年収の25%以内
- 借入金利は年1.3%
- 返済期間は35年
- 元利均等返済
- ボーナス返済なし
| 試算項目 | 全国 | 三大都市圏 |
|---|
| 平均世帯年収 | 1,129万円 | 1,249万円 |
| 推定手取り年収 | 約847万円 | 約937万円 |
| 年間返済額の上限 | 約212万円 | 約234万円 |
| 毎月返済額の上限 | 約17万6,000円 | 約19万5,000円 |
| 住宅ローン借入目安 | 約5,950万円 | 約6,580万円 |
平均世帯年収のモデルでは、手取りに対する住宅ローン返済比率を25%以内に抑えても、約5,950万~6,580万円の借入額になります。
土地を購入する必要がなければ、この予算の多くを建物と関連工事へ配分できます。そのため、大手ハウスメーカーの注文住宅や規格住宅も、現実的な比較対象に入りやすくなります。
ただし、この25%は住宅ローン返済だけの比率です。固定資産税、火災・地震保険、修繕、光熱費、駐車場などは別に確保しなければなりません。
実際の手取り額も、ご主人様と奥様の収入割合、扶養家族、社会保険料、住民税などによって異なります。平均世帯年収は高所得世帯の影響を受けるため、最終的な予算は各家庭の手取り額から計算してください。
3-3.土地から購入する場合と実家の土地を使う場合の違い
先ほど算出した住宅ローン借入目安へ、平均土地購入資金を当てはめると次のようになります。
| 地域 | 住宅ローン借入目安 | 土地購入後に建物・諸費用へ残る金額 | 実家の土地を使う場合に配分できる金額 |
|---|
| 全国 | 約5,950万円 | 約3,276万円 | 約5,950万円 |
| 三大都市圏 | 約6,580万円 | 約2,633万円 | 約6,580万円 |
土地から購入する場合、土地代を支払った後に残る金額だけで、建物、設計、付帯工事、外構、諸費用を賄わなければなりません。
三大都市圏のモデルでは、約6,580万円を借りられたとしても、平均土地購入資金3,947万円を差し引くと、建物と諸費用へ使える金額は約2,633万円です。この金額では、大手ハウスメーカーの注文住宅は予算面で難しくなる可能性があります。
一方、実家の土地を使えば、新たな土地購入費を負担せず、解体費や造成費などを差し引いた残りを建物へ配分できます。建物関連へ5,000万~6,000万円前後を確保できる家庭では、大手ハウスメーカーも含めた比較がしやすくなります。
なお、この表は異なる調査項目の平均値を組み合わせたモデルケースです。実際の平均的な購入事例や、金融機関による融資可能額を表すものではありません。
3-4.土地代が不要でも全額を建物へ使わない
実家の土地があっても、建物本体以外に次の費用が発生します。
- 既存建物の解体費
- アスベスト調査・除去費
- 測量・境界確定費
- 地盤調査・地盤改良費
- 擁壁や造成工事費
- 水道・下水・ガスの引込み費
- 外構・駐車場工事費
- 設計・申請・登記費用
- 火災保険・地震保険
- 家具・家電・引っ越し費用
- 予備費
土地代が不要になった金額を、そのまま建物本体価格へ上乗せするのは危険です。
最初に住宅ローンの上限を決め、追加工事、諸費用、入居後の生活防衛資金を確保したうえで、残った金額を住宅性能、間取り、設備へ配分しましょう。
3-5.大手ハウスメーカーで優先したい予算配分
実家の土地によって確保できた予算は、内装や設備のグレードアップだけでなく、完成後に変更しにくい部分へ優先的に使うことが重要です。
- 耐震性能と構造計算
- 地盤・基礎・擁壁
- 断熱・気密・日射対策
- 二世帯間や住戸間の遮音
- 防水・耐久性
- 将来の修繕費
- 必要な床面積と収納
- 家事・育児・介護動線
- 設備や内装のグレード
大手ハウスメーカーは、施工体制、長期保証、アフターサービス、鉄骨造、大空間設計などに強みがある一方、商品や仕様によって価格差があります。
「土地代が不要だから大手ハウスメーカーにする」と決めるのではなく、同じ建物面積、性能、付帯工事、外構、保証条件をそろえて比較することが大切です。
3-6.土地と建物の名義を建築前に整理する
親名義の土地に子世帯が住宅を建てる場合は、少なくとも次の点を整理します。
- 土地を親名義のまま使用するのか
- 子へ贈与または売却するのか
- 土地の使用貸借や地代をどうするのか
- 建物の建築費を誰が負担するのか
- 建物を単独名義または共有名義のどちらにするのか
- 親が亡くなった場合に誰が土地を相続するのか
- 他の兄弟姉妹へどのように説明するのか
- 土地を住宅ローンの担保にできるのか
実際の建築費負担と登記上の持分が一致していない場合は、贈与税などの問題が生じる可能性があります。
住宅会社だけで決めず、金融機関、司法書士、税理士を交えて着工前に整理することが重要です。